●巻頭言
デジタル化する世界と日本
新型コロナウイルスの世界的な感染、つまり「パンデミック」によって、社会や経済あるいは日常の生活風景が、一気にデジタル化している。対面での行動や人と人との接触が制約される中、テレワークやオンライン授業、ZOOMの活用などが、進んでいる。
世界と比べて日本のデジタル化の遅れがクローズアップされたが、デジタル庁の設置などによって日本も遅れを挽回するのに必死だ。
「デジタル」「アナログ」という言葉が広く人口に膾炙されるようになって、約20年。しかし、それぞれの意味を正確に理解するのは、難しい。誤解している向きも多いようだ。
「デジタル」は、すべてのデータを0か1で処理する。「コンピューターは2進法を使ってデータを処理する」と説明される。対して「アナログ」は、ギリシャ語由来の言葉で「関連がある」という意味を持ち、連続性がポイントになる・・・こう説明されても、実のところよくわからない。
端的に例を挙げてみよう。なんとなくだが、「アナログ」は「昔ながらのモノ」「時代遅れ」といったイメージが付きまとう。日常会話では「私はアナログ・タイプでして」と自嘲的にいうケースがある。いや、逆にそれを自慢にしている人もいるが・・・。
「デジタル」というと、「新しい技術」「時代の先端を走っている」といったイメージがある。スマートフォン→デジタル、手帳→アナログのような、決めつけをしたくなるものだ。
「電卓」がデジタルで、「そろばん」はアナログ――と理解している人も、多いのではないか。
それは間違った理解だ。そろばんは、1,2,3,4、・・・8,9,10・・・と数字を段階的に表現しているため、「デジタル」に分類される。同様に囲碁や将棋も範囲が区切られた盤面上で、対戦相手が順番に石や駒を置いていくので、その構造は「デジタル」だ。
言い換えてみよう。「アナログ」とは「連続した量」を表示する方式。一方、「デジタル」とは「離散した量」を表示する方式、のことだ。
そろばんは、珠を動かすことで計算をするが、珠によって表示される値は「離散した値」である。1・10とか1・28をすっ飛ばし、1のあとは2になるので、そろばんは立派なデジタル方式なのだ。
さて、「アナログ」「デジタル」の言葉の意味に深入りしてしまったが、IMそろばんのメンバーの中にも、誤解している人がいるのではないか。「そろばん」イコール「時代遅れの古い技術」ではないことを、あらためて強調しておきたい。
本題に戻ろう。デジタル化の大変革は、第4次産業革命ともいわれる。パソコン、インターネット、人口知能(AI),スマートフォンなどのデジタル技術によって、日常の暮しから仕事、経済や政治のありようまで、大きく変容を迫られている。
デジタル化の流れは2010年代からのスマートフォンの普及を機に本格化した。日本では今や60歳以上の高齢者でも、スマホ普及率は80%近くになっている。画面にタッチすれば多くのサービスを利用できる便利さを、若者も年配者も素直に享受せざるを得ない状況になっている。
パソコンやガラケーを忌避し、「あんなものは、利用しないぞ」と息巻いていた年配者も、世の趨勢には従わざるを得ない局面なのだ。
ところが、コロナ騒動で日本の政府や自治体の非デジタル化が、浮き彫りになった。コロナウイルス検査結果の集計を各地の保健所が手書きのFAXで県の衛生部に届けていた現状が、あらわになった。10万円給付などコロナ対策の各種施策を、自治体が住民に届けようとしても、本人確認や銀行口座の特定にとまどり、なかなか推進できなかった。鳴り物入りでスタートしたマイナンバー制度についても加入者は全国民の24・6%(20年末)に過ぎなかったことが、判明した。
菅内閣は、年明け以降、急速に支持を失っているが、ことデジタル化の推進については、与野党の別なく賛同者が多いだろう。とりわけ、高速/大容量の第5世代通信規格5Gが21年から本格化する局面であることも、デジタル化推進を大きく後押ししている。
ただし、日々進化するデジタル技術は、使い方次第で人々の生活や生計、安全を脅かす負の側面を併せ持つことに、改めて留意しなければならない。俗に「バカとはさみは、使いよう」といわれるが、まさに「使いよう」が大事なのである。デジタルはいわば「バカとはさみ」であり、「使いよう」を間違えれば社会に多大な悪影響をもたらすのだ。
「負」について真っ先に議論すべきは、デジタル化による失業者の増大だ。工場や店舗の無人化は雇用に大打撃を与える。「世界経済フォーラム」(ダボス会議)では、デジタル化の影響で25年までに世界で約8500万人が失業すると予測している。
産業革命が始まった19世紀初頭、英国では機械使用の普及により失業の恐れを感じた労働者が「ラッダイト運動」(機械破壊運動)を起こした。こうした運動が21世紀の今,再現されるかもしれないのだ。「デジタル・ノー」といったかけ声とともに。
例えば、デジタル化とコロナ禍のダブルパンチによって、日本のアパレル・ファッション業界は、危殆に瀕している。人々は「ステイ・ホーム」でデパートや専門店に行くことをためらい、ブランドのファッション製品の売り上げは、急速に落ち込んでいる。大衆品はアマゾンなどのインターネット通販で注文することになる。これによりファッション業界では、企業倒産や失業者が増えている。
メディアの業界では、新聞、雑誌、本など「紙」が主体の昔ながらの業態はどんどん衰退する一方、スマホを活用したコンテンツ提供がますます隆盛している。こうした傾向は、20年前から始まっていたが、5G時代になって一気に加速するだろう。
業界の栄枯衰退という身近な問題を注視することだけでは、すまされない。デジタル化が、地球規模で大きな問題を引き起こしていることに、目を向けるべきであろう。
GAFA,つまりグーグルなど米巨大IT企業や中国のアリババなどは、無料サービスの代わりに大量の個人情報を吸い上げ、データを寡占している。蓄積した個人データをもとに利用者の行動を予測し、誘導できるほどの実力を持っている。プライバシー保護や商取引の公平性をないがしろにしているだけではなく、世界的なサイバー戦争の引きガネにもなりそうだ。監視社会やデジタル覇権争いを,一層、助長するようなビヘ―ビアを取っている。
中国政府はコロナ禍に乗じて顔認証などのデジタル技術を使った国民監視システムを強化した。「密告社会」を作りつつある。
米国と中国、ロシアは、電力、交通、金融など重要インフラを標的とするサイバー攻撃を巡って攻防を繰り広げている。
米IT大手の20年10~12月期決算では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うデジタル化の進展を追い風に、記録的な好業績が続いている。米アップルと米フェイスブック(FB)は、売上高、純利益で過去最高を記録した。
例えばアップルの純利益は前年同期比で29%増と大幅に増えて、287億ドル(日本円換算で約3兆円)に達した。日本最大の企業であるトヨタ自動車の年間(12ヵ月間)の純利益は3兆円以下だが、アップルはたった3ヵ月でトヨタを凌駕する利益を上げているのだ。
超大国や巨大IT企業が自らの利益を優先して覇権争いばかりしていては、健全なデジタル社会は望めない。望ましいデジタル社会の実現には、地球規模の共通した理念やルールが必要だ。そのためには、視野を広げた前広の議論を展開すべきであろう。
NPO法人 I.M.そろばん
副理事長 猪熊 建夫
(2021.2.)
【投稿】生徒を多くする方法「その2」
『プログラム学習と公文教室』
令和3年の1月号にも投稿させていただく予定でしたが、妻が12月7日に体調不良のため入院、1月4日に手術となり、バタバタして新年号は欠稿となりました。申し訳ありません。
(1)プログラム学習
プログラム学習の件をお話します。
プログラム学習は、アメリカの神経学者・スキニーが考案した学習法であります。
このプログラム学習は、本来は動物に芸を教え込むのに考案されたものであります。
しかし、人間(子供)の学習に応用したところ、大変効果があることが分かり、当時
大いに注目を集めたものであります。
(2)プログラム学習の三大原則
そのプログラム学習には次の三大原則があります。
- スモールステップの原則
- 即解答の原則
- 完成の原則
①スモールステップの原則は、問題はゆるやかな登り坂で、決して難しい問題を急
にはさせないことです。
②即解答の原則
これは、その日のうち(すぐに)答えが合っているか、点数は何点かを知らせる
ことです。
③完成の原則
点数は、いつも100点、90点を取らせなさい、学習心理学上、50点や60点で
は学習意欲が湧かず、完成ではないのです。
あくまでも以上3つの原則を兼ね備えていなければならない、どれか一つでも欠けていてはプログラム学習は完成しないのです。
(3)公文とプログラム原則
このプログラム学習の原則に忠実に従って作られたのが、公文の教材です。
公文の創設者・公文公(とおる)先生は、プログラム学習に注目し、見事にプログラ
ム学習の三大原則に従って、公文の学習システムを完成させました。
(4)珠算はプログラム学習か?
私も、珠算の学習法に、プログラム学習が注目を受ける以前から疑問を持っておりました。
そろばんは、「階段式に学習できる」などとよく耳にしておりましたが、これから益々そろばん学習者の低学年化は進むだろう、低学年生にとっては「そろばんの級と級との間は決してスモールステップではなく、大きなステップ、段差の大きな階段だ」と思っておりました。
次の完成の原則は、珠算の場合は、基礎練習が終わり20問の問題に入ったとき、時
間を計ってやった場合最初は40点、50点であります。
(5)珠算の点数とプログラム学習
学習心理学から見ても、40点、50点は一番学習意欲が湧かない点数で、70点、80点取れ
るようになる頃には、次の級に進んでしまう。そしてまた全く学習意欲の湧かない40点、
50点を取ることになり、70点、80点を取れるようになる頃には、また次の級に進んで
しまうのです。
(6)そろばんと公文どちらを選ぶか
そろばんと公文を両方習っていて、学習日が同じなら子供はどちらに行きたいか?そ
れは公文です。なぜなら公文は100点、90点が取れるからです。
(7)そろばん教材とプログラム学習
公文に対抗するには、珠算の学習教材を作り直す必要があると思い、プログラム学習
の原則に従って練習問題を作りました。
最初に作ったのが、8級から1級までの各級に「ワン」「ツー」「スリー」「テスト」
の4種類の問題集でした。それぞれ1回~10回まであり、出題数は下記の通りです。
(8)いつも100点90点の教材
出題数を見ると、「配点はどうするのか?」という疑問が浮かぶと思います。
配点はすべて「5点減点法」です。ワンの場合、8題全部できると100点、1題違う
と95点、2題違うと90点、3題違うと85点。なんとなんと、ワンは全部違っても60
点取れるようになっております。合格は90点です!
(9)指導もらくらく!!
これですと、最初は問題が少ないので、分からないところ、間違ったところを十分に
見てあげることができます。「ワン」の段階で完全に理解させます。
(10)そろばんも正確さと速さ!
そろばんも正確さと速さです。プログラム学習も同じです。
そこで、ワン、ツー、スリー、テスト(検定問題)に速さを加味するため
ワンもツーもスリーもテスト(検定問題)も最初はかけ算8分から始め、
- 「Cクラス(各8分)」で乗算→除算→見取算で2回、90点以上取って合格したら「Bクラス」に進みます。
- 「Bクラス(各6分)」で乗算→除算→見取算と次のも1科目、これで90点以上を2回取れたら「Aクラス」に進みます。
- 「Aクラス」は各4分で乗算→除算→見取算、乗算→除算→見取算と一度の授業で2枚やります。
- では、どうやってタイムを計るのかと疑問が湧くと思います。これは人間技では計れ
ません。以下のように、当初はテープ、現在はCDに音声を吹き込んだのであります。現在は上記教材を進化させ、4割、8割、10割の問題数にしています。
次は公文に対抗するため、珠算に取り入れることが出来る「算数」「国語」についてお話します。当事者でない者が謝罪できるのか
曽野綾子 著『老いを生きる覚悟』より抜粋
【人を動かす三原則】
戦後、七十年目の節目にあたって、総理はこの夏「談話」を発表されるという。それを聞いた時、私は、なんとまあ大変な仕事をなさらなければならないのだろう…と感じた。
私は文章を書くことだけは六十年以上もやってきたので、少しは自由に表現できると思っているが、それでも一国の立場を代表する談話などというものを書ける人がいるとは思われない。いや、総理の近辺には東大法学部出の秀才がいて、世の中にできないことはないと思っているのだからその人が下書きもなさるのだろうが、文章の怖さは決して万人には受け入れられないという運命を持つことだと知悉(ちしつ)=(細かいことまで、知り尽くすこと)したうえでやるのだろうか。あらゆる人が納得するようなことだけを書けばこんな八方美人風の可も無く不可もない文章など通用すると思うのかとそっぽを向く人が出る。総理個人の思いが強力に打ち出されていれば、それに同感す人がるいるだろうが必ずそれを種に攻撃する人も出る。
中国や韓国は、先の戦争のことを謝り続けろ、というらしい。日本人は謝るというと言葉で表現し、頭を下げたり、土下座したりして、相手に優越感を味わってもらえば済むことのように思っている面があるが、通常、謝罪するということは深い罪の自覚と共に、お金か領土で弁償することだから簡単に誤っておいて済むことではない。それに、この頃私はよく考える。謝罪ということは、直接被害を受けた人と与えた人とが現在そこに当事者としている場合にしか成しえないことではないだろうか。仮に私個人に、七十年も前に起きたことを今でも言いたてる人がいたら、そういう性格の人とは付き合いたくないと思うに違いない。七十年前、顔を見たこともない私の曽祖父が犯した悪事を、今、普通の市民として生きている私に責められても、私としては誤りようがない。そもそも過去の認識という行為は、素晴らしいように見えるが、あくまで後ろ向きの姿勢なのだ。それより現在、現実にその人が、どれだけ誠実な市民として暮らし、周囲の人にも貢献しているかが問題であろうし、過去の認識へのそれが答えなのだ。
戦後の日本人は、国中焦土になった中から復興し、誠実に働いて優良な製品を作り、人道にもとる行為もせず生きてきた。それが、過去の戦争に対する反省であり、償いでもあろう。
ユダヤ人は謝罪という点では私達より、もっとはっきりした認識をしているという。
謝罪は、直接の加害者と被害者の間でしか成立しない。あるドイツ人が一人のユダヤ人に「戦争中ナチスに加わった同胞の罪を許してください」と言った。するとユダヤ人は答えた。「私はあなたを裁くことも赦すこともできません」なぜならば、私たちは当事者ではないからです。と・・・
もし、当事者でない者が謝ることができるなら、私たちは仮に、殺人を犯しても、容易に代理人を立てて謝罪をさせておけば済むようになるであろう。(2015.4.26記)
曽野綾子氏 作品のファン やっちゃん爺さんより☆彡
(I.M.そろばんセミナーレポート読者より投稿)~近況報告~
千葉県 ミタマそろばんアカデミー
毎年弾き初めとして行われている、当教場(ミタマそろばんアカデミー)のニューイヤーコンテストは、オンラインで開催を決定しました。5月頃の自粛期間のZOOMオンライン授業はこれまで経験していますが、リモートでコンテストとなるとそれぞれで環境が異なってしまうので公平な競技になるかどうかが一番心配なところでした。
参加者は25名程です。総合競技、2台の画面を使い確認しながら計算を始め採点は一問ずつ読み上げる方法でした。採点後すぐに、お母さま方のお力を借りて各生徒から写メで点数を入れ送ってもらいました。これが予想以上に時間がかかりました。読み上げ算については、一次予選・二次予選を予定していましたが、時間の関係でカットし、一次予選のみで、決勝戦を行いました。お昼休憩と、ゲームの時間を設け、表彰、感想文で終了となり、後日教室で賞状と参加賞を渡しました。今回は、裏方でのスタッフたちに恵まれました。OB大学生2名と、選手兼お手伝いの高校生と中学生3名。若者の力を借りて右腕が何本も生えたようでした。前日の打ち合わせでも、予測出来ることの対処方法など話し合ったり、コンテスト終了後にも反省点や、今後まだ続くであろうこの状況下でオンラインコンテストは有効か?等話し合いました。
みんな、小学生だったのに!こんなに頼れるなんて!!本当にありがとう!(^^)!
今回は、お家の方々にも採点等助けられ無事終えることが出来ました。【生徒・保護者の方の感想文】
N.K(4年生)
かけ算の問題では、あと1問のところで終わってしまったけれど、思ってたより出来てよかったです。聞き取り算では、ZOOMでよく聞こえなかったこともあり、一次予選で終わってしまってくやしかったです。
来年はもっとがんばりたいです。上のStepになると、どんどんむずかしい問題が増えるので去年よりももっとがんばりたいです。
O.K(1年生)
ひさしぶりにオンラインじゅぎょうが出来て楽しかったです。もんだいのBのほうがまるのかずがおおかったのでうれしかったです。
らいねんもニューイヤーコンテストに参加したいです。
らいねんは、もっといいてんすうをとれるようにがんばります。
Y(母)
普段、見られない子供達の様子が見られて嬉しかったです。他の子(特に中学生)の英語読み上げ算を夫が見て驚いていました。
いつかは息子も…と! 気合いを入れて親子共々頑張ります。先生とスタッフの皆様、ありがとうございました。事務局だより
2月7日(日)I.M.そろばん2021年新春セミナー
大盛況に終わりました!!
Hoult知子先生、ありがとうございました。イギリスより講師のHoult知子先生を始め、ハワイやオーストラリアからの参加者と共に、オンラインでコロナ禍だからこそできた、素晴らしいセミナーとなりました。
詳しいご報告と参加者の感想文は、次号セミナーレポートでお伝えいたします。楽しみにお待ちください。■I.M.セミナー開催のご案内
◆Step20検定試験問題、模擬問題の見直し(ZOOMオンラインにて)
日 時:2月12日(金)10時~12時
参 加 費:無 料
参加方法:お住まいの県名、お名前、教場名と、2月12日オンラインセミナー
受講希望と入れて、I.M.そろばんへメールを送信してください。
(im@imsoroban.com) その後、ZOOMのIDとパスワードをお伝えいたします。■募集します
会員・関係者様からの原稿を募集いたします。
- 教室紹介
- 今だから始めたこと
- 今だから始めたこと
I.M.事務局im@imsoroban.com まで、ご投稿宜しくお願い致します。