レポート178号 2020年8月

●巻頭言
李登輝氏の死去を悼む

台湾の李登輝・元総統が20年7月30日に、亡くなった。97歳だった。
中国共産党との内戦に敗れて台湾に渡った国民党・蒋介石の一党独裁体制を終わらせ、平和的に民主主義体制に移行させた李氏の業績は、歴史に深く刻まれる。富国強兵化した中国が民主主義とは逆の方向にひた走っている今、台湾の自由はその重みをいっそう増している。
流暢な日本語で「22歳まで自分は日本人だった」と冗談まじりに語っていた。というのは、李登輝氏は植民地時代の台湾北部(現新北市)で生まれ、旧制台北高校から京都帝大(現京都大)の農学部に進んだからだ。
入学の2ヵ月後には陸軍に入隊した。終戦で京大は中途退学せざるを得なかったが、1953年からは米アイオワ州立大―米コーネル大で農業経済学を学び博士号を取得し、台湾に帰国後は台湾大大学院教授に就任した。
72年には行政院(内閣)の無任所国務大臣に任命され、農業問題を担当した。蒋介石が75年に死去、78年に蒋介石の長男、蒋経国が総統になると、李登輝氏は台北市長に就いた。
88年には蒋経国総統の死去に伴い、戦前から台湾に住む「本省人」で初の総統の座に就いた。政治キャリアも浅く、実権を持たない「お飾り総統」とみられていたが、李氏は権力闘争を勝ち抜き、全力で台湾の民主化を進めた。
96年に李登輝氏は、台湾初の総統直接選で当選した。この選挙では、中国が李氏の得票を減らそうとミサイル発射演習を繰り返して威嚇したが,「中国を恐れる必要はない」と人々を勇気づけ、予想を超える得票率で圧勝した。台湾の民主化は「静かな革命」と呼ばれた。
対中国関係は、母校コーネル大の招待による訪米や総統直接選挙で急速に悪化した。99年には中国と台湾を「特殊な国と国の関係」とする「二匡論」を提起し、中台関係はさらに緊張した。
2000年には国民党主席と総統の座を辞任した。その後は自由人として台湾独立志向を強め、国民党籍を剥奪されたりもした。中国が主張する「1匡2制度」による統一に強く反対する姿勢を鮮明にした。退任後はたびたび日本を訪れ、90歳を超えても講演をこなすなど、精力的に活動を続けた。
世界の民主化を主導してきた米国で黒人差別に反対する大規模な抗議活動が起こり、国民の間には「分断」が進んでいる。香港では国家安全維持法が施行されて政治的自由が大幅に後退している。中国国内では、共産党の「一党独裁」により、民主主義とは真逆の政治的圧迫がひどくなっている。
民主主義の行方に懸念が高まる中、「ミスター・デモクラシー」と呼ばれた李氏の歴史的な業績を、思い起こしたい。彼の死去を、あらためて悼むものである。
他国の元政治リーダーの死去を、この巻頭言で取り上げることの背景には実は、個人的な感慨がある。小生と、当NPO法人の理事長である荒木光の2人は、京大で李登輝氏の後輩にあたるのだ。単に「京大つながり」ということではない。李氏は京大で学んだことを前述しているが、もっと正確に記せば京大農学部農林経済学科に属していたのだ。我々2人は、その学科の20年余、後輩の卒業生なのだ。
我々2人は李氏に直接お会いする機会はなかった。だが、農林経済学科の一部の卒業生は、台湾や日本で李氏と何度か面談の機会を得ている。気さくな人柄で日本国内の出来事についても詳しく語ったという。
ただ、一度、激しい口調で日本政府を非難したことがある。2001年4月に台北郊外で行われた記者会見で「日本政府の肝っ玉はネズミより小さい」と発言したのだ。心臓病治療のため訪日を申請したが、日本政府は中国の強い反対をおもんばかって、査証(ビザ)発給をためらっていたからだ。結局、内外の世論のあと押しもあって日本政府は発給を認め、李氏の訪日は実現された。
ただ、残念な一幕もあった。訪日の際、李氏は京都まで足を伸ばし、母校の京大のキャンパスを訪れるつもりでいた。しかし、日本政府は京大への立ち入りを認めなかった。李氏は、京大農学部の入り口まで行ったが、キャンパスに立ち入ることなく去った。農学部キャンパスから20分ほどのところに住んでいた農林経済学科時代の恩師の先生(元京大教授)には、面談できた。
ポンぺオ米国務長官は声明を出し、李氏について「大胆な改革は台湾を民主主義の模範に変える重要な役割を果たした」と称賛した。
これは過分な評価ではなく、正当な評価だろう。李氏が学んだ学科の後輩である小生は、こういう先輩がいたことを誇らしく思っているのだ。

NPO法人 IMそろばん副理事長 猪熊建夫
(2020.8.)

今をどう生きる

千葉県 太田 敏幸

 令和2年(2020年)が始まってすぐに「新型コロナウイルス」が世界中に蔓延し、終息の目途が立っていない今日、大変な被害をうけています。
私自身も困惑している状態です。勤務先は高等学校、所属団体は全国珠算教育連盟と日本そろばん資料館、そして珠算史研究学会です。
まず、勤務先の高等学校では、卒業式・入学式の中止、そして4月から5月末までの休校です。卒業式後のお別れ会(懇親会)、及び新学期に向けての結団式となる歓迎会(懇親会)などすべて中止となりました。
次は、そろばんに関係する事柄です。全国珠算教育連盟千葉県支部で予定されていた総会、及び珠算指導者講習会や、自らが講師として要請されていた行事の延期です。日本そろばん資料館では、学芸員会議、歴史から学ぶ珠算講座、日本そろばん資料館のメンテナンス(保守点検)、ソロバンサマーミステリー等行事の中止です。珠算史研究学会では、そろばん春の見学会、運営委員会、定期総会、珠算大学セミナー、創立四十周年記念式典、記念講演会などの中止や延期です。そして、全国からいただいた情報をもとに、そろばん関係資料を見学に出かける旅も中止となってしまいました。
今般のテーマである「今をどう生きる」を考えて実施していることは次の通りです。
まず、高等学校に関しては、休校中の課題作成です。
そして、そろばんの関係では、今までに収集していた資料を再度読み直し、原稿を書くことに重点を置きました。
➀「切手とそろばん」②「明治以降のそろばん産地」③「関東地方で作られたそろばん」④「そごう千葉店“ミニチュアライフ展”」⑤「渋沢栄一街中資料館」⑥「そろばん白井のひなまつり」⑦「マルタカ」⑧「食堂“多万里”」⑨「SDコーヒー北千住」⓾「世界地図“サンソン図法”」⑪「岡本一平とそろばん」⑫「俳句・川柳とそろばん」⑬「そろばん珠模様の小惑星」⑭「マスク」⑮「パプリカ」⑯「館山市立博物館“所蔵そろばん”」⑰「館山市立博物館 “渋沢栄一展”」⑱「館山市立博物館“新収蔵資料展”」⑲「北総鉄道白井駅“古関祐而展”」⑳「中野区歴史民族資料館“変わりゆく学び舎展”」などの原稿作成がそれです。
また、そろばんに絡む映画鑑賞の感想文を書く作業です。
➀「流れる」②「女が階段を上がる時」③「男はつらいよ―50th―」④「男はつらいよ―葛飾立志篇―」⑤「男はつらいよ―寅次郎相合傘―」⑥「男はつらいよ―寅次郎子守歌―」⑦「男はつらいよ―寅次郎夕焼け小焼け―」などを挙げることができます。
今後は、「ウィズ コロナ」を念頭に、健康に留意しながら原稿を書きつつ生きていくことが大切だと思っています。これが私の「今をどう生きるか」というテーマの答えです。


【IMで育った彼女たち…今を生きる応援メッセージ】

埼玉県 馬路ひなの(大3)

馬路ひなのと申します。私は、関根由季先生のもとで10年以上そろばんを習い、現在はオーストラリア、ブリスベンのクイーンズランド大学3年生として、文化人類学と国際関係学を専攻し学んでいます。コロナ禍でのオーストラリア生活の一片を紹介します。

オーストラリアでは、3月初旬からコロナ感染が増加しました。7月31日時点での豪州全体の総感染者数は16,905、死者数は196です。政府は、3月末から豪州人と永住者などを除き豪州への入国を禁止し、州境を閉鎖しました。その頃から、トイレットペーパーや食料の買い占めが広がり、マスクや手袋を身に着ける人が増えました。私の大学生活に関しては、コロナに感染した学生が多数確認され、1週間の大学閉鎖を経て3月末から授業の全てがオンラインへ移行されました。オンライン体制は学期末の7月まで続き、8月〜12月の次学期も継続します。

オーストラリアでの生活に関して、日本でのそれと比較して感じることがいくつかあります。一つ目は、連邦政府や州政府の対応が迅速で厳格と感じることです。3月末からレストランやカフェ、パブ、ジム、娯楽施設、図書館、宗教的な集会及び礼拝場及び葬儀場などの施設が営業禁止となりました。3月24日、首相は必要物資の購入や在宅勤務が不可能な場合の仕事を除き必要でない外出は避け、個人宅への来客も最小限に抑えるように求めました。5日後の29日には、屋外・屋内含め家族以外との集会は2人(自分以外1人)に制限しました。ここからわかるように、制限の内容が細分化され規定され、状況に応じてより効果的なものへと変えられています。以降、屋外や公共の場での飲食やマスクの不装着、不携帯による罰金なども追加されました。3月から6月中ばまでは、開いているお店はスーパーや薬局、銀行、ガソリンスタンドなど自粛生活で生き延びるのに本当に必要なサービスのみとなりました。事実上のロックダウンは無期限で、顔を合わせるのはシェアメイトの二人だけ、外出は週に2回ほどの食料品の買い出しだけでした。先行きの見えない状況で、緊急事態の政府や社会などに不安を感じ、大学の授業や課題をこなすのにストレスもたまり、毎日の自炊にも辟易しました。けれども、頻繁にある首相のアナウンスや州政府によるSNSの情報発信から、「政府が本当に働いている、住民を守ろうとしている」と感覚を肌で感じました。
二つ目は、大学における円滑なオンラインへの移行です。大学ではコロナ以前から、オンラインを使用した教育が充実していました。全ての講義は録画され、学生ページに毎週アップロードされます。大学の図書館は閉鎖しましたが、大半の論文や教科書は大学図書館のウェブサイトからアクセスできます。課題は、必ずオンラインで提出します。コロナの影響を受け、チュートリアル(講義内容について10~20人での行うディスカッション)が、zoomを使って行われることになりました。同じ授業を履修している学生や先生とは、zoomを通して質問や議論を行います。私は人文学専攻であるため、実技を伴う学科と比較して学習内容に変化が少ないことを考慮した上で、コロナによる大学授業への影響は少なく、それよりも、この難しい状況の中での最大限を目指す大学スタッフたちの気概を感じました。
5月、連邦政府はこれまでの基本的な制限を三段階で緩和していく「新型コロナウイルスに対して安全な豪州のためのロードマップ」を発表しました。ステージ1では5人までの自宅への来客、10人までの職場・公共の場での集会、レストランとカフェの再開、ステージ2は20人の集会、ジムの再開、ステージ3は100人の集会、州外への旅行の許可のように段階的に制限を緩和していきます。ステージ3の現在、コロナ以前とほぼ同じ生活を送るようになりました。昨年からブリスベンにあるそろばん教室でお手伝いをしていますが、そこでの授業も全てzoomで行いました。zoom上の画面から、子供たちのそろばんの珠の動きや姿勢、計算問題を見て指導することにも、だんだん慣れてきました。時には、私がそろばんの珠を操作できるウェブページをシェアし、弾き方をデモンストレーションすることもあります。振り返ってみると、3月から6月まではほぼ誰とも会わない毎日でしたが、zoomを使って日本の友達と話す機会となりました。中高だけでなく、小学校時代の友人とも連絡を取りました。ハワイのそろばん教室を通じて出会ったエミールとは、定期的に連絡をとっています。アメリカにいるエミールとオーストラリアにいる私とで、日本のニュースやテレビ、アニメについて話したり、それぞれの国の状況を共有したりするのは、楽しいことです。コロナの間には、zoomで話したり、課題を見てもらったりしてとてもお世話になりました。そろばんを通じて出会った友人と、コロナや国境を越えて関わりを持つことができ、とても幸せです。


千葉県 菅 南衣安(高1)

 コロナウイルスによって、3月に学校が休校になり、中学校最後のクラスでの思い出作りもできず、友達とディズニーに行くこともできなくなりました。大変だった受験勉強を乗り越えて、楽しい毎日を期待していた私にとって、また家にこもらなければいけない日々はとても辛く思えました。友達にも会えず、今まで家族全員が一日中家にいることなどほとんどなかったので、家族内でケンカも増え、ストレスが溜まってた時期もありました。
しかし、自粛期間は料理やお菓子作りをしたり、部屋の模様替えをしたり、家の中でダンスや筋トレをしたり、今までなかなか出来なかったことをしてみる良い期間でもありました。
6月からは学校が再開したけれど、行事もなく、ソーシャルディスタンスを保ちながらの生活は、理想の高校生活とは違いました。それでも、学校で勉強ができることの大切さを感じました。
また、今年の夏はハワイの大会にも出れず、ハワイのそろばんスクールの皆さんと交流できる貴重な機会がなくなってしまったと思うととても残念です。今年いっぱい、またそろばん練習に励んで、来年こそ大会に出て、自粛生活の事などハワイの生徒さん達と話せたらいいなと思っています。
最近はまた感染者が増え、芸能人も次々と感染していくのをテレビで観ると、より一層コロナの恐ろしさを身近に感じるようになりました。今一度自分の行動を見直し、感染予防を徹底しなければなりません。行動が制限され、政府の対策に不満を覚える人も少なくないと思いますが、誰にとっても初めての経験であり、誰を責めることもできないので、他人事ではなく、自分の問題としてコロナウイルスと戦っていかなければならないと思います。
一生に一度の学生時代が素敵な思い出になるように、少しでも早く収束することを願っています。

I.M.セミナー開催のご案内

◆Step20・Step19検定試験問題、模擬問題の見直し(ZOOMオンラインにて)

日  時:8月16日(日)14時~16時
参 加 費:無 料
参加方法:お住まいの県名、お名前、教場名と、8月16日オンラインセミナー
受講希望と入れて、I.M.そろばんへメールを送信してください。
(im@imsoroban.com) その後、ZOOMのIDとパスワードをお伝えいたします。

■7月23日(祝) I.M.セミナーのご報告

『Step20検定試験問題、模擬問題の見直しについて』
※検定試験問題 ⇔ 模擬問題・・・不具合の原因について

  1. 加減算
    模擬問題では加算と加減算が混合されているが、検定試験問題は加減算のみとなっている。
  2. 文章問題
    以前の指導図書にはStep19に「相当算」の導入となっているが、その後の改定でStep20で「相当算」の導入と変更されている。しかし、Step20の模擬問題にはこの「相当算」が入っていない。改定されたためStep19の模擬問題にも入っていない。
  3. よってStep20の検定試験問題に突如登場し、とまどうこととなる。

  4. その他
    ルビについて、端数処理問題についてなど話が出たが、今回は文章問題の不具合の
    みを訂正する。文章問題は、監修者の許可なく問題を変更することはできないため
    模擬問題と検定試験問題との出題のバランスと数字の変更による作問の改定を合わ
    せ持って、近々訂正を実行する。

■小学生大会について

現在開催できる見通しがついていません。今後も状況を鑑みて再検討していく次第です。

【I.M.会員、関係者の皆様へ御礼】

平素は格別のお引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。この度は私どもの活動にご理解頂き、十数名の方々より心強い寄付金を賜りましたことをここに深く感謝申し上げます。
これからもIMそろばんは、未来を担う子どもたちが知恵ある社会人に育っていくよう珠算教育に努めさせていただきます。今後とも、どうか末永いお力添えを頂きますようよろしくお願い申し上げます。
寄付金合計  115,000 円
皆様からの寄付金は、今後のIMそろばんの活動・運営資金(事務所維持費、コピー機リース料、セミナーレポート発行費用)に充てさせて頂きます。誠にありがとうございました。

【~ 募集します ~】

■会員・関係者様からの原稿を募集いたします。
①そろばん教室・面談(個人・三者)その意義
②今年はハワイへ行けなくて悔しい生徒の皆さん、ハワイの子どもたちへメッセージ
をお願いします。
※I.M.事務局 im@imsoroban.com まで、ご投稿宜しくお願い致します。

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