レポート173号 2020年3月

●巻頭言
海の森づくりを見直す

はじめに

令和2年を迎えて全世界が真に安心できるような社会を構築するために、人類社会の不安定性を改善する努力が強く要求されますが、さらに近年は毎年のように猛烈な異常気象が世界中に発生し、想像を絶する大災害を及ぼし、これまでも多くの尊い命が失われて来ました。このような異常気象は、自然要因による天災以上に、人為的な地球温暖化に因るものであり、これからも益々激しくなる恐れさえ見えます。このような世界的な異常気象はこれまでの急速な人口激増と人類の傲慢で無責任な生活形態に対する自然からの赤信号であることを忘れてはなりません [1~2]。異常気象の主原因が地球温暖化に因ることは明らかで、既に1997年の京都議定書に始まり2015年パリのCOP21で採択されたパリ協定では世界最大の温室効果ガス(CO2,CH4,N2O,ハロカーボン等)排出国の中国等の新興国も参加する画期的な枠組みで解決策を見出すために出発したのですが、今年から実行段階に入るパリ協定も米国の離脱により前途多難の状態です。
一方では、昨年末に突然、中国湖北省武漢市を中心に発生し短期間で世界中に広まってきた新型コロナウイルス感染症は、未だ明確な治療方法も確立せず全世界を不安に陥れ連日の情報に大騒ぎの有様です。新型コロナウイルス関連肺炎は、新型コロナウイルス「SARS-CoV2」が原因で発症する肺炎であり、日本国内では2020年1月15日に武漢市に渡航歴のある肺炎患者からこのウイルスが検出されたのが始まりです。どのような経路でSARS-CoV2が生み出されたのか、またはヒトに感染するようになったのかは未だ明らかではありませんが、中国武漢市の魚介類卸売場で集団発生したことから、そこに何らかの原因が潜んでいるとも考えられています。2002年に中国広東省から発生したSARS、2012年に中国地域を中心に発生したMARSなどもコロナウイルスの一種です。ヒトへの感染経路は主に飛沫感染と接触感染で、空気感染の可能性は少ないようです。感染者の主な症状や検査・診断法については繰り返し報道されていますが、何よりも確実な治療方法が一日も早く確立されることが待たれます。今後の関連情報が本当に心配です。
本稿では、地球温暖化対策に資する情報の一環としての植物バイオマスの活用について、前号[3]に引き続き、最近の話題に触れさせて頂くことでお許し願い上げます。

グリーンカーボンの役割

グリーンカーボンという名称は、2009年10月に国際環境計画(UNEP)の報告書で、海洋生態系の生物活動で固定・隔離・貯蔵された炭素資源をブルーカーボンと初めて定義するに当たり、それの対語として、これまで、地球全体での生物活動による貯蔵炭素をグリーンカーボンと総称してきた名称を陸上と海洋を区別して、陸上の森林などによって吸収・蓄積される炭素資源のみに限定して、改めて命名されました。
我が国は北欧に次ぐ世界有数の森林国であり、決して大きな国土ではありませんが、その全国土面積(3,779万ha)の67%が緑豊かな森林で占められています。その内、森林全体の58%が私有林、42%が国公有林であり、それら森林の多くは奥地の急峻な山地や水源地で、良質な水の供給、土砂災害の防止・軽減、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など私達の生活を快適に守るための重要な働きをしてきました[2-,3]。何よりも、陸上の森林資源(植物バイオマス)は、地球温暖化を緩和するための温室効果ガス吸収、化石燃料代替エネルギー源などの環境保全、土壌表面浸食防止や土砂崩壊防止など、洪水緩和、水資源貯蔵、水質浄化などの水源地涵養、豊かな木材・林産物などの産生、防風・防音、気象緩和などの環境緩和効果、森林生態系の保全、貴重な野生生物の保護等、そして美しい四季が人間生活に豊かさを与え、健康改善・保健・リクレーション・文化遺跡の保護等の多様な役割を果たして参りました。一方、植物バイオマスとは、未利用のままの、または廃棄された植物資源で極めて潤沢なエネルギー源となるもので、全地球上の蓄積総量は陸上だけでも炭素換算で1兆トン以上とされ、年間エネルギー消費量の30年分以上にも相当します。また、年間あたりの植物の光合成量による増加分を約1,000億トンとして、化石燃料の10倍以上が毎年繰り返し再生され、再生型天然資源として永久に尽きないものと期待されています。今後は人間の知恵により、海洋生態系も含めて、これらをどのように活用するかを良く考えなければなりません。

地球温暖化防止にも役立つブルーカーボン

陸上植物には、半永久的に利用可能な太陽からの光エネルギーを利用して、光合成により、大気中の炭酸ガスを有機物として固定するという重要な働きがあり、特に樹木は幹や枝の形で大量の炭素を蓄えています。また、製品としての木材を住宅や家具などに利用することは、木材中の炭素をさらに長期に渡って貯蔵することに繋がります。その上、木材は、鉄などの資材に比べて、製造や加工に要するエネルギーが少なく製造・加工時の炭酸ガスの排出量の抑制効果にも役立ちます。一方、木材のエネルギー利用は、大気中のCO2濃度に影響を与えることもなく、化石燃料の消費を抑制することにより、化石燃料代替効果も生まれます。
森林の最も重要な機能の1つに、木材などの生産があります。林野庁では、早くから適切な間伐などの森林整備によって得られる間伐材などの木材資源を計画的・安定的に供給することを通じて地域振興策の指導に努めてきました。陸上の森林資源に関する林野庁の活動については既に紹介致しましたので、本稿では省略させて頂きます[3]。
日本は、幸いにも豊かな森林に恵まれているだけでなく、島国であるために周りが世界で6番目になる全長3万5千km以上の広大な沿岸(浅海域)で囲まれています。日本の沿岸地域には、コンブやアマモ等の1500種に及ぶ海藻類が生い茂る藻場が広まっています。藻場には多くの海洋生物が餌を求めて集まり、ときには隠れ場として身をひそめ、産卵場や棲み処として次世代に命をつなぐ維持機能があります。まさに海の森なのです。ブルーカーボンは、沿岸地域の海洋生物がCO2を吸収して固定される炭素のことで、貝殻やサンゴの骨格など、主に炭酸カルシウムとして固定されます。
沿岸海域が炭素貯蔵庫として特に大切なのは、海底泥域中に貯蔵されたブルーカーボンが数千年レベルの長時間分解されずに貯蔵される点であります。これは、海底泥内が無酸素状態で保持され、バクテリアによる有機物の分解が抑制されるためです。海底には年間2億トンの炭素が新たに埋没し貯留されることが推定されています。これでも、海洋全体の面積の僅かに1%以下の浅海域(海底まで日光が届くエリア)が,貯留される炭素全体の80%程度を占めるのには驚きます。このように、陸や海は、地球全体の炭素の主要な貯蔵庫として機能すると共に、大気中のCO2の主要な吸収源にもなっているのです。とりわけ亜熱帯地方や、その他の汽水域(陸と海の境界域で淡水と海水が混ざる域)に大量に発達するマングローブ(紅樹)林では、単位面積当たりの二酸化炭素の吸収速度が最速とされています。その他、浅海域では、塩性湿地、海草藻場、海藻藻場などの生態系による吸収速度の大きいことが報告されています。日本国内では、炭素固定が最高となるのは海藻藻場で、海草藻場、マングローブ、干潟の順となっています。
最後に、ブルーカーボンが今注目される理由には次のような点が挙げられます。①ブルーカーボンに関する科学的な知見が近年顕著に増加したことと、②気候変動の緩和技術やネガティブエミッション技術(NETs)としての評価技術の急速な進展が始まったことです。NETsでは大気中のCO2を除去する技術が主で、森林管理、土壌管理、湿地・沿岸域(ブルーカーボン生態系)再生等の自然ベースの技術や、直接大気中のCO2を補足・貯留する等の工業ベースの技術が提案されています。自然ベースの技術は、社会実装への障壁が小さく、持続可能等の長所があり、工業ベースでは、コスト、エネルギー消費、環境負荷等の社会実装には解決すべき課題があります。その他、自然ベースの技術は、食料供給、水質浄化、観光レクレーションや防災・減災等の生態系サービス等の相乗便益も期待できます。しかし、自然ベースは本来、自然自身を活用するため、不確実性が高く、CO2吸収速度が比較的低い等の短所も見られます。さらに、今後は世界的な温暖化のために、海面上昇や異常気象の発生等に対する沿岸域管理が課題となることも考慮する必要があります。

おわりに

今後、グリーンカーボンについては、国や自治体と民間事業者だけに全て任せるのではなく、国民全体が森林保全・育成に強い関心を持ち、自らよく学び、よく考え、そして積極的な活動に参加できるよう、各人の知恵と努力が期待されます。さらに、森林育成の先進国として、豊かな森林を守り育てるために蓄積された植林技術や人材育成の在り方を全世界に広め、国際協力を推進して行くことが重要となります。これほど大切な森林の役割や豊かな森林資源を無事に子孫に残すために、これまで以上に産官学全体が協力して、さらに、国民全体が一つになって、各個人それぞれが良く考え、あらゆる努力を続けることにより、絶対に森林をこれ以上荒廃させてはなりません。そして、世界中に植林技術を広め、緑豊かな森林、自然界の恵みを心から感謝して自然界に恩返しをするためには人類は何をなすべきか、真剣に考える知恵を育て上げなければなりません。
ブルーカーボンについても、既に諸外国の研究機関や行政機関が本格的に研究を進めて居り、日本でも国交省をはじめ東大や北大、地方自治体の研究機関、官民の諸研究機関等が積極的に研究を重ねています。研究会も頻繁に開催され、今後の発展が期待されます。これからは、各個人もしっかりと学習して、現存する課題を根気よく解決して行く努力を重ねることが重要となります。
本稿では、行政と研究者の立場から地球温暖化対策に役立つ植物バイオマスについて限られた紙面の中で研究状況を少しばかり紹介して参りましたが、ここで「考えるソロバン人」の先生方や若い皆様にも「自然との共生」の在り方について「自然の恵みを有効に活用するために何をなすべきか」を改めて独自に良く考えて頂き、実践する姿勢を持つことです。もし可能ならば共同体(珠算塾)の仲間同士で議論できる時間を是非持って頂きたいと心から願う次第です。

IMそろばん名誉会員
大阪府立大学名誉教授
林 壽郎
(2019.12.)

●つぶやき

この数日、世間は新型コロナウィルスの件で大変物騒な話題へ変化し、国内が落ち着かなくなりました。その件にて自分のできる事を教室で実行できるならば…お役に立ちたいものです。
当教場の方針としては、今直ぐご家庭へ発信しなければ役に立たない「絵にかいた餅」になりそうです。みるに、日本政府から発表された全国の学校休校の件は、大変ショックでした。が、一番良い方法であるからこそ大変でも協力もいとわないという気持ちは大切なことと思います。決まりは守り、落ち着いて実行・協力をしたいものです。しかも2~3日ではないのですから無駄なく協力をさせていただき、せめて…と成ろうとも有意義なことだったと納得のできる対応へと努力をしましょう!と考えます。幸い、教室はほとんど毎日授業日ですから、ご家庭との考えは、私たちが気持ちを合わせれば大きな力となることもできるはずです!
さて、日本政府が世界規模をも見据え、即、対応を講じたウィルス対応策は、全ての学校が休みを実行し、即、対応が出来たことは、国民の信頼がいかに大きい政府であったことかの認識を国民自体が知ることができたものと再認識させていただいた次第です。
病気の蔓延は絶対に防がなければならない。その意義の大切さの上に立ち、共に各生徒に対する休講を実行する上で、年間の成果を評価する大変な時間に学生の例年ならば一日も無駄にできない時期に百歩を譲る気持ちでありましょう。
さて、保護者の気持ちはいかがでしょう。一つだけ気になることがありました。その件で、当教場は親ごさんの仕事で留守の時間、子供の生活を順調に守れるか!?これだけでした。即、決定!…当教場は通常と少々変化し、A.M.10時~P.M.8時、先生が居ります。教室は授業の実行に努めます。いかなるご都合に合わせ、対応させていただきまます。
いつもの通り授業をさせて頂きますので、御子さんが困った時は、そろばん教室へお越しください。少なくとも教室へは9時出勤、授業開始は4時とし、通常授業の午後8時まで対応させていただきます。
この対応は、飽く迄も“この度の学校のお休みに対する、ご家族のご心配に合わせ、一時的処置”ですがご活用頂きます様お知らせ申し上げます。
以上

2020年 3月1日
N.P.O. I.M.そろばん理事
喜多 吉子

●ハワイからの便り

IMそろばん事務局長様

メールを拝読しました。グローバルオリンピックの延期、苦渋のご決断とお察しいたします。準備を進めてこられました先生方、この日を楽しみにしていた生徒の皆さんには残念の感は拭えないでしょうが、今の日本の現状を鑑みますと当然の選択と存じます。救いは「中止」ではなく「延期」とされたことではないでしょうか。
さて、ハワイサイドとしては、8月下旬に競技会が実施されるものとして例年どおり準備を進めていく予定です。
6月に日本の競技会実施がずれることに関連して、一つ大きな問題は、ホテルの予約です。例年5月中に宿泊名簿と共に予約を入れ、部屋数を確
保しております。それが6月下旬、あるいは7月に入ってから予約が確保できるかどうかがお約束できないと思います。
島内観光やサンセットクルーズなど観光関係は、7月上旬でも大丈夫だと思います。今のところお返事できるのはこのあたりです。

ハワイは日本ほど新型コロナウイルスの影響は深刻ではありません。マスクをしている人を見かけることもあまりありません。イベント、行事の中止、延期の話も出ていません。私たち自身も、平常の生活を送ると共にそろばんスクールも通常どおりに開けております。世界状況からすると比較的穏やかな状況です。千葉でも感染者が出たとのニュースが入っております。皆さま、どうぞこの国難を乗り切ってくださることをお祈りしております。

アラキヒロヤソロバンスクール
大嶋 秀明

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