レポート158号 2018年12月

●巻頭言
世界の異常気象は天災か人災か

異常気象発生の原因

これまでの世界的な異常気象の出現は、地球全体や地域的規模の気候変動として、人類とは関係なく、太陽系宇宙の惑星の宿命(氷河期など)が自然界を支配し、45億年昔の地球誕生以来、一定の周期で地球にも大きな影響(天災)を与えてきました。例えば、数年の周期で自然に発生するエルニーニョ/ラニーニャ現象が、これまでは異常気象の原因であるとされてきました。これまでの異常気象は「過去に経験した現象から大きく外れたもので、人が一生の間にまれにしか経験しない極端な現象」と定義されてきましたが、近年の内容は全く異なり、現代の異常気象(激しい気象、荒天、悪天候)は従来の「天災」だけの概念とは異なり、人類が引き起こした地球温暖化問題や自然環境の破壊問題の影響を大きく受けた「人災」に基づく重大な課題となるもので、あたかも身勝手な人類に対する天罰であるように思われます。日本でも、これまでの阪神淡路大震災をはじめ、東日本大震災と原発事故、熊本大地震も未だに回復も不十分な状態であります。特に、本年の夏季はこれまでに経験したことのない歴史的な連続災害が日本列島を襲いました。6月18日には大阪北部大地震(震度6弱)があり、7月には西日本豪雨が続き、各地で大規模な被害が出ました。その後、日本各地で殺人的な猛暑が続きました。そして、7月末から日本列島を襲った台風12号は、気象庁が1951年以降、統計を取り始めた観測史上「初めて」のコースを取り、予測が難しく、上空の寒冷低気圧と猛暑の高気圧の競合で、東から西へ列島を横切る異常な経路を取りながら、各地に大被害を及ぼし、その後も猛暑と豪雨が続きました。8月には、信じられないほどの猛暑が各地を襲い、続いて、台風20 号(8/23)、21号(9/4)、24号(9/30)、25号(10/6)と、連続して大型の台風が繰り返し日本列島を襲撃し、それぞれ甚大な被害を与えました。さらに、9月6日には、北海道大地震(震度7の激震)が突然発生し、想像を絶する大被害を及ぼし、長期停電(ブラックアウト)まで発生しました。これまでの大きな連続災害で本当に多くの方々がお亡くなりになりました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
このような猛烈な異常気象は世界各地にも発生し、北アフリカや欧州をはじめ、米国西海岸で猛暑と異常乾燥のため大規模な山火事が発生しました。東南アジアでは、スーパー台風22号(9/15)がフィリッピン北部を襲い、多くの犠牲が生まれました。さらに、インドネシア大地震も大きな被害が発生しました。米国でも、超大型のハリケーンに連続的に襲われ、想像できないほどの被害が出ています。このような世界的な異常気象は、自然要因による地球表面温度の上昇(海水温度の上昇を含む)と人為的な地球温暖化(人災)の相乗作用の結果によるもので、今後も永く続くことが心配されています。地球の平均表面温度は、過去数百万年間では、氷河期と温暖期との間で約10万年毎に揺れ動き、過去1.2万年間では、この気温変化が極めて穏やかになった結果、人類が繁栄出来たのです。この穏やかな自然変動に加えて、主に20世紀に大気中に放出された多量の温室効果ガスに起因する人為的な気候変動が地球規模で生じており、現在では自然変動を圧倒する恐れがあり、今後は人為的温暖化(人災)が異常気象を生み出す主原因となることが予想されています。

異常気象対策の法的取り組み

豪雨と猛暑が続いた今夏のような異常気象に対処するため、日本政府は気候変動適応法案を纏め、温室効果ガスの排出削減対策(緩和策)と、気候変動の影響による被害の回避・軽減対策(適応策)を車の両輪として法的に位置付け、関係者が一丸となって適応策を強力に推進して行くことを提案しました。本法案の概略については、本レポート第154号でも紹介しましたが、ここでは、その具体的な内容について少し追加させて頂きます。
本法案の概要は、①適応の総合的推進、②情報基盤の整備、③地域での適応の強化、および④適応の国際展開に大別されています。①では、国、地方公共団体、事業者、国民が気候変動適応の推進のために担うべき役割を明確化すること。国は、農業や防災等の各分野の適応を推進する気候変動適応計画を速やかに策定し、その進展状況について、把握・評価手法を開発すること。将来影響に関する科学的知見に基づき、例えば、高温耐性の農作物品種の開発と普及、魚類の分布域の変化に対応した漁場の整備、堤防・洪水調整施設等の着実なハード整備、ハザードマップ作成の促進、熱中症予防対策の推進等が挙げられます。気候変動影響評価は約5年ごとに行い、その結果等を勘案して計画を見直します。②では、適応の情報基盤の中核として国立環境研究所を位置付けました。例えば,米の収穫量の将来予測の中で、品質の良い米の収穫量を重点的に情報を纏めたり、砂浜消失量の将来予測など、災害防止に役立つ環境改善に関する情報を集めます。③では、都道府県及び東京23区を含む市町村に、地域気候変動適応計画策定の努力義務の強化をはかり、地域において、適応の情報収集・提供等を行う拠点として地域気候変動適応センターの機能を担う体制の確保、および、広域協議会を組織し、国と地方公共団体等が連携を強化して地域における適応策の推進などを進める。そして、④では、国際協力の推進と事業者等の取組・適応ビジネスの国際的な促進などが計画されています。
この度の顕著な異常気象について、専門家で構成された気象庁の異常気象分析検討会(中村尚会長)では、本年夏季の猛暑と豪雨の原因についての検討会(8/10)で「異常気象の連鎖の結果であり、その背景に人為的な地球温暖化があり、今後もこのような顕著な豪雨・猛暑などの異常気象の発生が続くことを覚悟すべき」と説明しています。

人類の豊かな未来を拓くために

これからの地球環境を積極的に改善して行くためには、国際的な協力体制をさらに厳密に構築することが必要ですが、各国の指導者達の責任だけでなく、人類社会の豊かな未来を拓くためには、全世界の各個人、とりわけ若者達全ての自覚と協力が不可欠であります。
霊長類の中で、人類は初めて直立二足歩行が可能になり、両手が自由になりました。ゴリラやチンパンジーは遺伝的に最も人間に近く、五感(視角、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)も殆ど同じとされています。人類も、五感で世界を認識してきました。それにも関わらず、人類だけが異常に大きく発展出来たのは、家族と共同体を持つ二重構造の社会を創造したためです。その中で、それぞれがお互いに五感をさらに磨き上げてきました。そして、人間のみが持つ言葉は五感を共有するための手段(シンボル)として大きな役割を果たしました。人間の脳が早くから現代人並みの大きさ(1500cc)にまで発達したのも人間社会の二重構造のお陰でした。共同体は、150人程度の集団で生活できる大きさで、複数の家族が過去に一緒に体験を共有した人数、生きて行く上で頼りになる人数で構成されます。そして、五感に基づく共感能力によって達成されたお互いが強い繋がりのある集団なのです。
人間の赤子は大脳新皮質が未発達のままで生まれて来ます。生後直ぐに家族が所属する共同体の中で共同保育が始まります。大脳新皮質の神経網は生後から3歳位までは周囲の身近な大人達の態度や考え方、感情などの全ての情報をひたすら吸収する完全な摸倣期で、言葉と一緒に記憶の仕組み・五感を鍛えながら情報処理によって知能が育って行きます。その後、創造・錬成の時期では、主に前頭連合野の脳細胞神経網が大きく発展します。この段階では、共同体の役割が一段と大きくなり、本人にも自覚が芽生え、自分自身を確立して自主性を持とうとして、根気や意志・意欲、創造力が育てられます。第六感(鋭く物事の本質をつかむ心の働き)を正常に育てるためにも、早期から共同体の中で十分に五感を鍛えることが大切なのです。
一方、現代人は、行動範囲の急激な拡大に伴って、共同体を越えた多数の人達と付き合わざるを得なくなり、言語的な情報交換、情報処理能力が必要となりました。言葉は人間の記憶の外部化であり、見えないものを見る効力を持つため、さらに大きな役割を果たします。複雑な現代社会の中で、若者が自分の正しい位置を見つけ、自分の能力を理解して活躍できる場を確立するためには、先ず最初に五感を鍛え、第六感を精一杯に使って世界を理解することが大切となります。子供達は自発的な学習を通して自ら考え、育つのです。
人類はその後、急速に人口が増大し、現在では75億人を越え、深刻な食糧問題や地球環境問題が大きな課題となってきました。現代社会で解決すべき課題が山積する中で、最大の問題点は、家族と共同体の二重構造の社会が崩れ始めたことです。複雑な現代社会で最も大切な家族の繋がりが希薄となり、共同の子育てがなくなり、共食の機会が激減したため、五感を使う情報交換ができなくなり、個人が社会に裸で放り出されてしまいました。
人間だけが持つ大脳新皮質の前頭連合野の働きによって、これまで教養を身につけ、文明を開発し、文化を伝承して来ましたが、これは全て意欲・創造の精神の具現にほかなりません[1]。そして、各個人が自ら考え行動する自由意志を生み、自主的な努力を通して、豊かな未来・将来が与えられるのです。理解力、判断力、思考力を養うことも大切ですが、もっと重要なことは、直感力(第六感)を豊かに働かせ、意欲を自由に伸ばし、創造の喜びを体験することなのです。そのためには、広い視野に立って人間性を育てる珠算塾という共同体を見直し、その中で、幼少時から五感を磨き、自ら考え、意欲と創造の精神を育てる珠算学習を経験することが、現代社会で力強く生き延びていく本人の将来のために、最も大切ではないでしょうか。

大阪府立大学名誉教授  林 壽郎

●ヒロヤの独り言

間もなく2018年も終わろうとしています。先生方に於かれましてはこの暮れはいかがお過ごしでしょうか。I.M.そろばん検定、ステップ18・19・20の合格者は出ましたでしょうか。
最近、訳の分からない保護者もどきの方から珠算教育の検定試験の在り方についてご批判をいただく事がある。珠算教育に進級制度は必ず必要なものである。
最近、進級制度を無視して、英語を指導している教室がしばしば見受けられる。珠算教育の中に英語教育を入れることは手段であって目的ではない。しばしば、英語を取り入れていられる教室を見受けられるが、その先生は会話ができるのであろうか。珠算教育の進級制度は、明治の中旬ごろ学校教育にそろばんがなくなった時に、ある先生が検定制度を作ったと承っている。今日では、その制度が時代に即応したものであると考えられ改良された。今日、日本では大きく分けて三つの珠算団体がある。どの団体をみても珠算教育には縁遠い教育団体であるように思われる。
例えば、水素と酸素が結合すれば全く違った性質の水が発生する。同じように小学校一年生の時に算数、国語、理科、社会、音楽等の教材は学年が進むごとに難易度が高まっていく。6年生になると1年生から6年生のおなじ教科を難易度の違う強化を学習することによって自然に頭の中が整理されるように教育がされる。そろばんは81通りの運手法がある。それ
を縦横に学習することによって自然に子供の集中力、忍耐力、持続力、計算力等が身につくことにより、おなじ教科でも1年~6年生までの難易度のある教科を整理整頓し、理解する力が付く。学校教育の目的を珠算教育は十分果たしていると思われる。その進級制度を研究もせずに今、否定している保護者もどきがおられるように見受けられる。今こそ我々珠算教育者は、保護者もどきに十分に理解させる必要がある。
もう一つ怖いのは、珠算教育者自体が進級制度を否定される先生がおられる。その先生にはSTEP1~STEP20まで今一度学習して戴く必要がある。
それでは会員の先生方、来る年も良いお年をお迎えください。

2018.12 荒木 碩哉

●検定委員会だより

来年こそ、I.M.そろばん検定試験を会員、全員が受験体制を充実させましょう!!なんと言ってもまず、Step1から!!
〝また、大晦日がやって来ます“こんな言葉は昭和の名残りと思う程、懐かしい響きです。そう言えば最近では大晦日だからと普段との違いはいかがなものでしょう…時代は変化しました。
N.P.O.法人I.M.そろばんも猪熊建夫副理事長のご出版「名門校100」のお蔭をもちまして「素晴らしいですね!」と会員も素晴らしい勉強をしているかの様に声掛けられ、嬉しい事でした。10月・研究集会にあたり、会員の先生よりI.M.事務所へ『会員の皆様のための本の購入費として寄付』の送金が有りました事のご報告を受け取りました。一会員としてもここに感謝し、お礼とともにご報告させていただきます。
生徒をどのような育て方をするべきか、再度お読み頂けましたら幸いです。紙面にて大変力強いご協力に感謝してご報告申し上げます。
I.M.は、30年度もまだ半ばです。今後のI.M.を支えるのは、何と言ってもStep20までを小学6年生、および中学1年生までに合格を目指しましょう!!I.M.検定が難しいのではなく、学力が十分に行き渡る手順で学ぶことができる検定であります。それを合格する学習の段どりを生徒一人ひとりの身に付けさせて上げましょう。それには、I.M.の年間行事を見つめ直しましょう!!

●事務局だより

2018年12月158号を ★大切な先生へ一冊★ お手渡しのお願い

会員の皆様!お世話になっております。
当、I.M.そろばんは1999年にセミナーが開催されました。9月又は10月ごろだったと思います。「決まり良く2000年からの会員になります。」と入会日を2000年1月となさった先生がおられた事を思い出しました。つまり、I.M.セミナーとして二十年を経過するに至りました。早いものですネ! “足掛け二十年”と言われる訳です。
当初、張り切ってそろばん教室を充実させる為に勉強においで下さった先生方、そしてそのお教室を継承なさっておられる先生方へ久しぶりにお目にかかりたいものと、あいさつ文をしたため乍ら懐かしく、是非とも「現在のI.M.そろばんを応援していただき」学力をスキルアップさせるそろばん教育の為に力をお借りしたいと存じます。
会員の先生方!『セミナーレポート158号』は、是非お知り合いの「そろばんの行く先」を想う 素晴らしい先生へプレゼントなさって下さるよう、あと1冊、同封させていただきます。どうぞ、お手渡ししていただきますよう、お願い申し上げます。

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