レポート157号 2018年11月

●巻頭言
オンリーワンを目指せ

本庶佑京都大学特別教授が、本年度ノーベル医学生理学賞を受賞された。1949年の湯川秀樹先生の受賞以来、27人目の日本人の受賞になる。今日までの、世界中のノーベル賞受賞者数約870余名に比して、日本人の受賞者数はおよそ3%になります。すこし少ないのではなかろうかと思ってしまいますが、これが日本のレベルの現実なのでしょう。
本庶先生は、受賞決定を受けての記者会見などで、いろいろなことを述べられておりました。本庶先生はじめ、ノーベル賞を受賞された方々のほとんどが言われていたのは、基礎研究が非常に大切であるということでした。現在の日本では、すぐに結果が出る研究がもてはやされている現状を憂いておられます。文科省の予算の配分も、その傾向が非常に強いです。
あらゆる分野で、日本中が、すぐに役に立つ結果が出ることを重要視し、10年20年先に備えての諸活動を軽視しすぎています。人間の日々の生活は、10年20年100年先に繋がっていかねばならないにもかかわらず、短期的な効率のみを重視する現在の風潮は、日本の将来のため、危惧すべきことです。
教科書を簡単に信じない  常に疑え
物事に不可能は無い    必ず道はある
ナンバーワンではなくオンリーワンになれ
何を知りたいか      不思議だと思う心を大切に
とも言われております。
また6つの“C”大切にしなさいとも言われております。
Curiosity(好奇心)   Courage(勇気)    Challenge(挑戦)
Confidence(確信)   Concentration(集中)   Continuation(継続)
頼まれて色紙に揮毫する時は、“混沌”と書かれるそうです。混沌としたものに注目し、そこから研究成果を上げていく、といったことを言われておりました。
どれも我々ごときでは消化できないですが、含蓄ある言葉で、人生の指針にすることが出来るものばかりです。“ナンバーワンではなく、オンリーワンになれ”という言葉は、今日の日本社会への警鐘のようです。
今日の日本は、効率よく知識を身に着け、すぐに結果を出すことが正しいという社会です。じっくりと基礎を学び、そこから創造的なものを生み出すことには、時間がかかり、大変なことですが、無限の発展を得ることが出来ます。そこで生み出されるものがオンリーワンです。これを生み出すような教育は、今日の日本ではなされていないです。これでは、何時まで経っても、欧米などで研究生活を送った経験のある研究者で無いと、オンリーワンの研究成果は得られないです。
ところで、本年度のノーベル賞受賞者のうち、女性は2名でした。日本人の歴代受賞者の中には女性は皆無です。また、今日までのノーベル賞受賞者に占める女性の割合は、5%程度です。非常に少ないです。これは、女性の能力が低いということを表しているのではないと思います。
日本の女性研究者の地位が低く置かれている、という現実があります。大学院博士課程を終えて学位を取得しても、女性の研究職への就職は非常に困難です。依然として男社会であると言わざるを得ません。どの大学においても、女性の地位向上に関する研究は、熱心ではないと言えます。ジェンダー論などの講義を開講するとしても、非常勤講師で済ませている大学が多いです。
世界の研究職の社会も、ひょっとして、依然として男社会なのかもしれません。また、ノーベル賞の選考をする組織も、男社会なのかもしれません。
現在の安倍内閣の女性閣僚はたった一人です。日本の政治は完全な男社会であると言えます。日本の女性の地位は、国際的にみて非常に低いです。毎年世界フォーマルが女性の地位の国際比較を発表しています。日本の女性の地位の世界順位は、2015年 101位  2016年 111位    2017年 114位です。年々低下しています。
この数値は、毎年、はっきりと公表されているものです。それでも、政策で積極的に何とかしようとする姿勢は、全く見られないです。保育園の待機児童の問題も一向に解決していません。女性が働きやすい社会環境が出来ていないのです。
そもそも、イクメンという言葉があること自体がおかしいのです。子育ては、女性だけがやるのではなく、夫婦共同で行うべきものです。育児を手伝う男性を特別視することは、誠におかしいことなのです。しかしながら、未だに、若い人でも、家事や育児は女性の仕事と思っている人が非常に多いです。男女共に社会で働くのですから、育児も家事も全く対等に、男女ともに行って当たり前なのです。待機児童の問題は、女性の問題ではないです。子育てしている家庭全体の問題なのです。人間としての基本的な問題なのです。
また、日本の家庭はいまだに“家”制度を引きずっています。そもそも、家庭というものは、人間としての男女が共同して築き上げるものなのです。“家”が先にあるのではないのです。世界の流れは男女別姓なのです。男女別姓を希望する人が認められないのは、家制度の崩壊を危惧してのことなのです。
いつまでたっても、男社会が無くならず、女性の地位が低いことを、例えばマスコミなどが、もっと世論を喚起するキャンペーンをしても良いはずです。しかし、全くその動きが無いです。
日本の社会は、情報過多と言われています。しかしながら、報道の自由度の世界順位は72位です。(国境なき記者団)世界経済の中で大きな地位を占めているにもかかわらず、報道の自由度については、誠にお粗末なものなのです。
タレントのちょっとしたゴシップは徹底的に暴きますが、政治的な問題については徹底したキャンペーンなどはしないです。女性の地位向上のキャンペーンも、非常に不十分です。日本の報道機関は、政治的社会的権力に対し、徹底して忖度した記事しか書かないです。それを指摘されても、そうすることが中立性のためであると言っています。
本庶先生ではないですが、私たちは、多くの情報を疑ってかかり、生き続けるためには、何が正しく必要なものかを判断する力が、必要なのです。その力も知恵といえます。

理事長 荒木 光(京都教育大学名誉教授)

http://plaza.rakuten.co.jp/honkideeco

●ヒロヤの独り言

小学校低学年の頃、二宮尊徳立像の周りに昼休みになると10人前後の生徒がたむろしている。なんの目的もなくただ、座っているだけであった。私が給食を食べ終わりその彼らの周りに行くと、決まって私の友人は「ハー、はら減った、水でも飲んでおこう」といって、水道の蛇口の方へ小走りに走っていった。
最近、同窓会で、その話題をすると彼は笑いながら「俺の家は兄弟姉妹が多くて給食代が払えなかったんだ」と言った。彼は同じ町内に住む家の子で長男である。私より6歳上で、中学・高校は天才でした。大学は京都大学に入って卒業後は東芝へ就職した。
彼は高校時代、小生の家で週4日、2時間のそろばんの練習を欠かさなかった。結果、4段を合格し、目的を果たした。又、その友達の姉は、尊徳の立像のたもとに腰かけて図書館から借りた本を読んでいた。毎回学校が発行する「読書感想文」に投稿していた。私は、それを読むのを楽しみにしていた。同級生の彼は私が近づくと決まって、何かと理由をつけて私のもとから離れて行った。
最近、当時のことを聞いてみると「兄弟姉妹が多かったので、給食費が払えなかった。その為、兄弟で昼休みの給食は月を決めて交代で給食を食べていた」そうだ。であるから、当然給食を食べられない月があり、腹の減った日は給食代わりに水を飲んだのであった。
今日、学校の給食費が払えないご家庭が、申請される中で何パーセント行政が支払うべきであるかと問うてみたい。(あり得無いという訳ではない)
民主主義が発展するとその規則を守ってもらう為に行政にうそをつく保護者が出てきた。例えば、保護者が法律上の離婚をして家の玄関には父親の表札と、母親の表札を掲げていて、実際は一緒の生活をしている。子供の教育費は離婚をしているので払わない。父親は、外車を乗り回していて、母親は毎晩カラオケをたしなみ、帰宅はいつも深夜である。子供の教育費にはお金を払わないが、遊びの費用は惜しまない。担当の役人に聞くと「法律上、親たちは離婚をしている。保護者が独身であるから教育費や給食費を払えないと申請書が出されれば受け取る。そして行政がそれを処理・実行をするということになるそうだ。
これは如何なものだろう。これが民主主義と言っていいのだろうか!

2018.10 荒木 碩哉

第17回研究集会 感想文

平成30年10月7日(日)~8日(祝)
於:観音寺市豊浜コミュニティセンター

千葉県 菅  幸子

ちょっと遠すぎるかな・・・と今回の参加は諦めようかと思っていましたが、6歳の息子を連れて思い切って参加してとてもよかったです。内容の濃い2日間でした。
初日では、福田先生に実際に授業で行っている「パスカル版」を使った指導を見させていただきました。幼児を扱うことの多い私にとっては、一つ一つの細かい作業など勉強になりました。特別講演の石原先生の時間は、割合や分数の指導で「あ~、わかった!」と声をあげたくなる内容でした。実際に今の小学校の算数指導の問題点なども聞けたので、何がどうしてわからなかったのかも分かり、これからの生徒たちへの指導で伝えられそうです。他にも、考える力を付けさせることの大切さやその方法などたくさんのお話をして頂きました。You tubeでも先生の授業が観られるとのこと、活用したいと思います。
2日目、会員の先生方の発表、これがIMそろばんの醍醐味です。先生方、尊敬します!!
会場の目の前はきれいな瀬戸内海、キャンプ場も隣接していて、まつぼっくりやきのこを集めて息子は夢中で遊びました。研修会とはいえ、とても癒され素晴らしい2日間でした。ありがとうございました。


香川県 福田ハルミ

 10月7日、8日の両日、IMそろばんの第17回研究集会に参加させていただきました。幅の広い、中身の濃い勉強を色々と吸収いたしました。中でも、菅幸子先生の「幼児のそろばん指導を保護者に理解して頂くには?」のタイトルで発表された内容について、深い感銘を覚えました。特に広告については、私がしたいと思っていたとおりの内容とパワーポイントも適切なので、本当に感心いたしました。
IMそろばんで広告について、即一考くださるとのことですので、よろしくお願いいたします。
二日間、ありがとうございました。


茨城県 平塚 恒夫

 香川県での研究集会ということで、台風25号が通過するなか現地に到着出来るか大変心配していましたが無事参加出来ました。
セッションⅠから生徒さんが参加した実践的な発表は、実際の教室での指導方法が見られて、とても良く理解出来ました。
石原先生の割合についての話しは、非常に「興味」がありました。特に何十年も前から教育の現場でも状況(生徒たちの理解の度合)が変わっていないことに、どう理解させるのかの難しさがわかりました。その解決として、考える力を養っていくことの大切さが必要とされていることもわかりました。これからの課題であろうと思います。
ユーチューバー(YouTuber)として、これらのことがアップされているとのこと、ぜひ観てみたいものです。
各先生それぞれの発表が行われました。これからも各々自分の意見や体験を発表できる様な場の提供がされていることに感謝します。


香川県 天野 晶子

 そろばん暦、先生暦の短い私を受け入れて頂き、いろいろな学びをさせて頂き、とても心に残る2日間を過ごさせて頂きました。
物のあることの重要さ、実生活とつなげることの大切さ、楽しむこと、考えることの素晴らしさを再確認しました。
教えるというと強いイメージがあるので、私の知っている事を伝えていく(分かりやすく)(楽しみをともなって)、共に学んでいくことを続けていけたらと思います。
どの先生方も、いろいろな知識、知恵をお持ちで今後につなげていけたらと思います。
また学ばせて下さい。ありがとうございました。

※buysの様にゲーム感覚でお金に触れ、社会の仕組みを知れるのはとても良いと思います。我が家では、ボートゲームを多く使用しています。(モノポリー等)考える力をつけるゲームを取り入れるのは面白いですね。


千葉県 両川  徹

 今回も貴重なお話をありがとうございました。
過去、割合を理解するのがおそかった私は、今までに抱えていた割合に対するもやもやを解消することが出来ました。割合も奥が深い。やはり、他の方のお話を聞いて〝引き出しを増やす″ということは常に続けていかなければならないことを実感しました。


埼玉県 山本亜季子

 今年は香川県にて開催、無事に終了することができました。
地元香川県の福田先生によるパスカル版を使用した指導、生徒さんにも参加していただいての実演からは、じっくり丁寧に幼児指導をされている凄さを感じました。
また、今回特別講師の石原先生より、「割合」の教え方をはじめ、世の中には割合があふれているからこそ重要であること等も教えていただきました。割合の問題ができない子供たちが多数を占めているのにもかかわらず、その対策が未だになされていないという現状を伺い驚きました。この状況の中、石原先生はいくつもの自作教具を使用、にらめっこ図をもとにした指導法はわかりやすく、楽しく勉強させていただきました。
今年も各先生方のいろいろなお話をお聞きすることができ、気持ちが引き締まりました。
有意義な二日間をありがとうございました。


千葉県 喜多 吉子

研究集会はいつも「今度は何処になるかな…」と期待します。
初回の研修はいつだったかと、突然考え出しました。パソコンで初回を調べてみると平成14年でした。水元公園でした。正直なところ、公園が美しくて広くて、「たまにはこんな所で勉強も良いものだ」と、嬉しかったことを思い出されます。葛飾区金町の近くで、映画の寅さんに逢えそうな気持ちも…。
この度は、「お遍路さん」で有名な香川県観音寺近く、何だか良いことがありそうな気分で嬉しいものです。講師「石川 清貴」先生のお話は「割合の考え」ですが、わり算と割合は「天」と「地」の違いに感じられました。ただし、あんまり楽しくて講師の方の人生をお聞きしているようです。例は違いますが、1枚の色紙を2分の一の大きさに分けるとどのぐらいの数になりますか?
これを「1÷1/2」と表すと延々と疑問がわきます。子供の考えをフォローする言葉が沢山ある、わかりやすい説明が他にもある、と勉強しなければなりません。
石川先生の塾は、季節の野菜が授業料にもなっている。これは荒木先生の京都の塾もそんな時期があったというお話を思い出しました。とにかく楽しい講座でした。


●事務局だより

【名門高校100の紹介】

当I.M.そろばんの副理事長であられる猪熊 建夫様のご執筆「名門校100」をご案内致します。
「時代をリードする人物はここから育った」と当会、猪熊副理事長は、毎月・三回のペースで十年間をかけて「週刊エコノミスト」に書き続けて参りました。
「I.M.そろばんの会」では、我々珠算人として名門100を読むことで、知識・教養をより身に着けていただこうという目的で、購入いたしました。会員全員に無償でお読みいただきたく、10月のレポートと共にお届けしてございます。
どうぞ、そろばんの先生や保護者の方へお薦めください。ご購入の際には定価の二割引きでお届けできます。当方事務局へご連絡ください。

●訃報

N.P.O.法人 I.M.そろばんが創立以来、副理事長をお願いしておりました 榎 彰徳様 が病気の為、療養の甲斐なく、平成30年10月27日(土)にご逝去なさいました。生前のご厚誼に深く感謝するとともに謹んで会員のみなさまにお知らせいたします。
なお、理事長が会員の皆様を代表して29日葬儀に参列致しました。

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