レポート152号 2018年6月

●巻頭言  真の珠算教育における温故知新(2)

珠算教育目的[1]

本年3月(第149号)に「珠算教育論(要旨)」(原著:小柳津恒)の序論・珠算の日本的特色について拝読した感想を述べさせて頂いてから早くも3カ月が過ぎました。本稿では記念誌第三章珠算教育目的を拝読し、併せて、日本における珠算の教育目的とその効果について、幼児教育の重要性とその有力な教育手段としての珠算の効用について脳科学の立場から、関連すると思われる二つの文献を紹介させて頂きます。
記念誌第三章では、我が国の珠算教育目的について、極めて明瞭簡潔に、今後の日本における珠算教育は長い歴史の中で様々な文化と出会ってきた中から、時代の要請に合わせた日本独自の珠算法を確立することの重要性が説かれています。続く第四章は本誌の中で最も重要な部分を占め、珠算教育目的を達成するための具体的な珠算教育法として、珠算技術練磨の実際と珠算の法理論としての算法論、定位法論および教材論について明快に解説されていますが、本章は珠算専門家にお任せ致します。筆者は「珠算とは日本の風土に根差した日本的なもので、それは客観的にも主観的にも基本として存在すべきだと見做せるものであり、客観的な効用だけでなく主観的な日本精神を培う珠算教育目的にこそ意義があることを忘れてはならない」という力強い提言と「日本における国民精神の神髄は「道」という概念であり、即ち大和魂である」という言葉に大きな感動を受けました。大和魂は先の大戦で勇猛果敢な特攻精神という誤った武士道精神に利用された不幸な時代がありましたが、本来の大和魂の真意は、平安時代から日本固有の精神として発生したものであり、歴史的な力と社会的な個人の生命を包みながら、個々人の生命を超越する全体的な尊厳、即ち和を意味するものと承っております。ここで、和は単に日本民族同士だけに留まることなく、多民族も包括した世界的・全体的な根本的概念であります。
第三章では、さらに、この和を用いた教育には、いくつかの段階があり、古くは、古代の中国文化の模倣期から、中世期の寺院教育の時代、江戸期の日本文化に中国文化を融合した和魂漢才時代、その後の幕末からの西洋文化のやや偏った模倣期を経て、西洋文化を教育に取り込んできた和魂洋才時代を経験したことが示されています。そして、江戸時代に中国から導入された算盤が、その後日本独自の工夫と改善が重ねられ、現在の日本式算盤として完成されました。今後は日本独自の精神に基づく日本式珠算教育法(和魂和才!)を確立し、世界に向けて力強く発信していくことが待たれます。

和俗童子訓

本稿では、真の珠算教育の在り方に資すると考えられるであろう関連文献二件を紹介させて頂きます。先ず最初に和俗童子訓[2] について簡単に紹介させて頂きます。著者である貝原益軒(1630-1714)は、養生訓で有名ですが、福岡の医家に生まれ、幼少から病弱でありましたが養生に専念し、儒学者としての活動を生涯続け、多くの著作を残しました。和俗童子訓は、養生訓に先駆けること3年、彼が81歳の1710年に執筆された日本で最初の体系的な教育書であり、特に早期からの幼児教育の重要性を強調した点で世界的にも先駆的な幼児教育論とされています。本書は総論、読書法と手習法、女子教育論から構成され、総論を除くと、児童心理の発達過程に則する一般教育法と教科内容に則した読書法と手習法とからなり、ほぼ教育活動の全分野について詳細な内容を含むものであります。そして、総論における最大の主張は早期教育の重要性であり、親の責任において三歳児までに施すべきであるとするもので、幼児教育の原動力としての親の愛情と知性の在り方について説き、幼児を正しく育ててゆくための道筋と方法に関し、その詳細を具体的に解説しています。その後で本書では、読書・手習いを中心に、教育する最適の年齢を考慮し、六歳児から成人までの本人の年齢に応じた段階的で具体的な教育法と教材を詳しく解説しています。さらに、彼自身は珠算教育者ではありませんでしたが、算数教育の実践(珠算学習)の重要性を繰り返し強調していることは注目に値します。これらは未だ脳科学の知識もない当時において、本人の脳の発達段階と見事に一致した教育論を展開していることに大きな感動を覚えます。
一方、江戸時代初頭に日本独自の数学(当時は算数と同じ意味)である和算が成立し、その後急速に発達したのも、数を目に見えるように造られたアナログ教育器具である日本式算盤が全国に広まったお陰であり、さらに江戸中期には関孝和(1642?~1708:和算家)らにより大きく発展した時期が、貝原益軒と全く重なって一致しており、お互いに何らかの影響を受けたのではないかと思われます。江戸後期には日本中で数学ブームが起こり、和算は子弟に日本式算盤を使って自分で考える能力を育成するためには最適の算数教育の教材となりました。しかし、明治時代の西欧数学(洋算)の輸入により、残念ながら、文字通り日本独自の考える珠算教育の原点ともなる和算が日本の初等教育現場から姿を消してしまいました。

脳を育てる

筆者が珠算学習の脳科学的効用の独学を始めました最初の頃に熟読した愛読書である。脳を育てる[3]を、最近もう一度原点に戻って再読を始めました。著者の時実利彦先生(1909.9.4-1973.8.3)は、日本を代表する大脳生理学者として、日本で初めて、大学に脳の生理学を専門に研究する講座を開かれ、日本の脳研究全体を発展させるため、ご自身で厳しい研究と後進の教育に骨身を削られました。最後まで現役として、東大医学部脳研究施設教授と京大霊長類研究所教授を歴任される中で、著書も多く、多大な学問上の功績をあげられました。当時から、創造力のある意思の強い人間を養成する必要性を説かれ、人間の脳の構造と知能の発達、特に知恵と意欲を引き出すための段階的教育と訓練の重要性について判りやすく解説されています。筆者も、本書により、大脳を鍛える上で、視覚・聴覚などを総動員しながら手指の効率的な運動を行うことが極めて重要であることを学び、それに基づいて、珠算学習の脳科学的効用について勉強を始めた次第です。
人間の脳の発達と珠算学習の役割については、既に、当セミナーレポート第133号の巻頭言でも紹介させて頂きました通りであり、本稿では、既報内容との重複を極力避けながら、これまでと少し異なった視点から改めて読み直した結果を追加させて頂きました。
人間の大脳新皮質の神経網が生後急速に発達する時期は①模倣(生後から3歳位まで)、②創造(5~6歳頃)、および③錬成(10歳頃以後)の3段階に大別されます(第133号参照)。①の時期は、実は情報処理をする後ろの方の場所の脳細胞(後頭葉・側頭葉・頭頂葉など)の神経網が発達します。そこでは、常に接する両親や身近な大人の態度、考え方、感情など全体の働きを、赤ん坊は全部吸収する完全な模倣の時期です。そして赤ん坊は、失敗を恐れず無言の努力を重ねて行くのです。そのため、大人自身の個性が大きな課題となります。さらに、①の段階は、古皮質が伴に完成度を高める大切な時期でもあり、特に両親や身近な大人から愛されることによって古皮質の活性が高まり豊かな情操が育て上げられる時期でもあることを忘れてはなりません。大脳新皮質の後ろの部分では、視覚、聴覚、皮膚感覚(手指運動が主となる)が、言葉と一緒に記憶の仕組みによって蓄えられます。そして、既に蓄えられたものと、新しく得られたものとを照らし合わせて、知覚し、理解し、認識して情報処理して記憶する知能の座として鍛えられていきます。
一方、②と③を含む時期は主に前の部分にある前頭葉(前頭連合野)の脳細胞の神経網が大きく発達します。前頭葉では、蓄積された情報と新しい情報を組み合わせる思考や、不足な情報を新しく取り入れて組み直す創造、そしてそれを人間行動として表現しようとする正しい意志決定(意欲)が鍛えられます。このような前頭葉の活動は人間だけのものなのです。また、喜び悲しみの情操(情緒)もまた、前頭葉の重要な働きなのです。さらに、②の段階では、本人に自覚が芽生え、自分自身を確立して自主性を持とうとするため、根気や意思・意欲が強く求められます。従って、大人の態度も、本人の自主的な意欲・取捨選択・競争心を育てるため、適切に指導し、前頭葉が正しく鍛えられ活動できるような教育に専念することが大切となります。そして、③の段階は、前頭葉の発達の最終的な仕上げにあたり、本当に人間として確立するための重要な時期となります。ここでは、脳細胞の神経網を発達させるには意欲と訓練が全てです。意欲を高めるとは、ある目標を立てて、それに向かって根気よく突き進むことです。目標が達成されたときには苦しさなど吹き飛んでしまいます。そして、脳を鍛える訓練には、ただ練習、練習、努力、努力があるのみです。①の段階での赤ん坊の頃の失敗を恐れず自信を失わなかったあの無言の練習と努力を想い出して欲しいものです。
最後に不躾ながら筆者の信条を述べさせて頂きます。それは、珠算教育の究極の目標は、考える人間の本質を育成することであり、脳科学的には、前頭葉の脳細胞を、より複雑に、より緻密に絡み合わせることを通して、意欲、創造の精神を育てることにあるということです。現在の我が国の公的な初等教育では真の珠算教育からほど遠い実情で、詰め込み主義の教育が中心であり、子供たちは受け身の形に終始して、前頭葉の発達には殆ど役に立っていない恐れがあります。このままでは将来が心配です。そのため我が国では、珠算塾が中心になって真の珠算教育を社会教育の一貫として着実に完成して頂きたいのです。今後は急速な人工知能時代に突入するからこそ、前頭葉の発達に大きく役立つ真の珠算教育のできる珠算塾が求められているのです。IMそろばんの益々のご発展を願い上げます。

大阪府立大学名誉教授 林 壽郎

●~ アーリーサマーキャンプを終えて ~

埼玉県 関根由季

今回は片道3時間半と遠方の為、参加を見合わせようかと思ったりもしましたが、毎年とても楽しみにしている生徒もおり、教室からは8名の生徒とともに、参加させてもらいました。
海ならではの楽しみの他、今回は両川先生の「バイスゲーム」もとても盛りあがり、楽しかったようです。1度目はゲーム(お金の流れる仕組み)の理解が難しかった様子でしたが二日目(2度目)では、チームごとに目標を立てたり戦略を立てたり、ゲームの内容を少し理解し取り組んでいました。さすが、塾の講師の経歴を持つ、両川先生ならではのオリジナルゲーム!
冒頭の映像にもあった、10年後、20年後のいろいろな場面で生きる学習になったことと思います。たくさん学んでたくさん遊んだ有意義なキャンプでした。
準備から、何から何まで本当にお世話になりました。ありがとうございました。
荒木先生からのシャーペンも生徒が皆喜んでいました。ありがとうございます。

千葉県 菅 幸子

今年も担当させていただきました。今年の千葉県鋸南町の保田は、目の前に海、山、そして海に沈む夕日が眺められる、自然が美しい場所でした。各セッションでは、助数詞と概数計算、スピード算など担当の先生方にお任せしてIMだからこそ勉強できる内容で教えていただきました。そして今回の目玉とも言えるBuyS(バイス)ゲームは、お金の勉強です。カレー料理人グループがカレー作りの材料を仕入れます。一方、米屋グループ、香辛料グループもカレー料理人に買ってもらうためにいかに安く仕入れて高く売るか考えます。お互いに交渉して売買を成立させ、黒字になったグループが勝ちです。これは思った以上の子ども達の心をつかんだようで、一番楽しかった~、と口々に子ども達から聞くことが出来ました。今回のキャンプは、下は4歳から上は高校生の18歳までの幅広い年齢層の中で、中高生が有段者でもあり、きもだめしや生活のお世話をしてくれる環境でした。その中で同じようにそろばんを弾いたり、ゲームを楽しんだり一緒の体験をしていたことが、小さな子たちにとって憧れとなり楽しい経験となった様子でした。
遠くから、千葉の海まで生徒さんを連れてご参加ご協力して下さいました先生方、本当にありがとうございました。お天気にも恵まれ、日本の夕日もハワイに負けてない!こともわかりました!(^^)!

千葉県 両川 徹

一つのセッションにてバイスゲームを担当させていただきました。
元々、小学校高学年~中学生を対象にお金のしくみを学習してもらうために作ったゲームですが、そろばん用に一の位まで計算するように設定して、実施しました。
計算力をつけるという目的でバイスゲームが役に立ったかどうかは検証のしようがないのですが、おおむねみんな楽しんでゲームに臨んでくれたようでした。当初懸念していた「動かない」「理解できない」ということもなく、一丸となって臨む姿は私の想像をはるかに超え、大盛況だったように思います。
「カレーの相場が高ければ、お米も高く売って大丈夫」など、子供たちの発想力には本当に驚かされるばかり。私自身も交じって一緒に参加して、どんな発想なのかを肌で感じたいくらいです。
これらのことから、私個人としてもバイスゲームの可能性を確かめることができました。
また、子供たちが楽しんで勉強できる一つのきっかけに、そしてそろばんを続ける一つの理由になってくれればと願うばかりです。
これも、この度セッションをひとつ任せてくださった先生方のおかげです。
必要であれば飛んではせ参じますので、今後ともお声がけください。

千葉県 喜多 吉子

今年もキャンプが開催されました。開催の最初は関東が担当県でした。茨城県で開催し、思い出となるのは会員のお母さんが元気で、赤ちゃんもよい子に眠って参加していたこと、その子が5年たって愛知県のキャンプに於いて山中を流れる小川(山の斜面を流れる細い川を沢と言った)の付近でキャンプに本格的に参加し、肝試しで“怖い!もの見たさ”で大泣きしても尚且つみんなに付いて出かけ、見た目に怖いはずの箱の中からアメを取って自慢げに帰って来てくれました。それから15年です。
1年生の女の子が今回も出かけては行ったものの泣くに泣けずにブツブツ言って私に抱かれ、「だって○○××」と言いながら参加せずに帰って来ました。……参加した子供が怖い話しと、お土産にドーナツを手に入れて楽しそうに怖そうに帰って来ました。
未だ、抱かれてブツブツ言ってた子が“あのドーナツどうしたの?…”ご想像下さい!
何がどうなっても心配無用、キャーキャー怖がる声とゲットする食べ物は不安を全部解消して素晴らしい化け物の小説の中に入ってしまうらしい!これは素晴らしいエネルギーの表現なのだ!!
らいねんも宜しく!!

埼玉県 山本 亜季子

今年のアーリーサマーキャンプの参加は3教室のみではありましたが、グループごとのセッションが多く、リーダーである中・高生が中心となり、無事に終了することができました。担当の先生をはじめ、諸先生方には大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
グループでのセッションが多かったことで、交流はもちろん、チーム一丸となり取り組む姿勢、協力しあうこと等を経験し、チームワークが大事であることを実感できたことと思います。また、この様子を間近で見ることができたこと、指導者としても、学ぶことがたくさんありました。
あっという間の二日間…いろいろ思うことがありましたが、中でも、タイムスケジュール通りに実行することが上手くできなかったことは反省点とし、また来年、参加したいと思っています。
毎年、参加者全員が、また来年も行きたい!と思って帰ってきます。今回、当教室では登校日等と重なり、残念ながら参加できなかった生徒が数名おりました。昨年、意気投合した他教室の生徒に会うために参加したかった生徒や、遅れてでも参加したいという生徒もおりましたが、現地までが遠く(夕飯に間に合わない)、断念することにしました。
来年こそはと…

※個人情報保護のため、画像を加工しています。

●検定試験について

●行事予定

以下の行事が企画されています。
■ 理事会・定例総会
■ グローバルそろばんオリンピック in Hawaii
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●事務局だより

セミナーレポート5月号にてご投函のお願い(ハガキ同封)致しましたが、未投函の方が居られます。下記の通り、理事会並びに定例総会を開催いたします。出欠に関わらず、6月30日までに必ずご投函の事、宜しくお願い致します。
総会終了後は、講演会を開催致します。万障お繰り合わせ戴き、久方ぶりに『副理事長 荒木 碩哉』によるお話しをご堪能下さいますようお待ち申しております。
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喜多 吉子

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