レポート148号 2018年2月

●巻頭言 食べ物は自然からの贈り物

つい先日新年を迎えたばかりなのに、早いものでもう2月。陰暦では如月(きさらぎ)。由来には諸説あるようだが、衣を重ね着する「衣更着」説が、「きさらぎ」の語源として有力とか。今冬の寒さを思うと、なるほどと納得する。暖房の発達していない昔は、寒いときは衣類を更に重ね着して暖をとって、暖かくなる春を心待ちにしていたのだろうな。
寒い時期になると、白菜や葱・大根などの野菜と魚介類、肉などを使った鍋物が食卓を飾る。魚介類や肉類のタンパク質や脂質、それに野菜のビタミン類やミネラルが加わった鍋料理は栄養的にも優れているし、何よりも体がほっこりとあたたまる。
しかし、今冬は鍋物の登場する回数が例年より少ない気がする。鍋物の主役となる葉もの野菜の価格高騰が原因であるようだ。生育時期だった昨秋に、産地が長雨や台風に見舞われ、生産が大幅に減ってしまったためである。農林省の発表では、レタスが2.4倍、キャベツが2.1倍、白菜と大根が2倍、昨年12月25日頃の小売価格は平年を大きく上回っていたという。今年に入っても野菜高の傾向は変わらず、家内と行ったスーパーでは、白菜1玉600円、キャベツ半玉350円だった。大根も情けないくらいの太さのものしか売り場には並んでいなかった。お好み焼き屋さん、キャベツ食べ放題の串カツ店も困っているようである。いつもだと、「今日も鍋か!」とこごとをいわれるが、今年は言われない。孫たちも野菜が高いのを知っているようである。
一方、1月10日頃からは、新聞紙上で養殖ウナギの種苗となる稚魚(シラスウナギ)が、今冬極端に不漁だという報道が続いた。ご承知のように、ウナギの場合は人口受精によって孵化させた稚魚にえさを与え、大きくするという近畿大学が30年かけてクロマグロで確立したような完全養殖の体系は、いまだ確立していない。したがって天然の稚魚を養殖業者が購入し養殖池に入れ、えさを与えて大きくして市場に出荷するのである。天然のウナギ成魚は、琵琶湖・四万十川などでごくわずかに漁獲されるのみで、市場にはまず流れない。我々が食するウナギは全て養殖ウナギと言える。養殖ウナギの種苗となる稚魚がなければウナギ養殖は成り立たない。河川で成長した天然のウナギが産卵・受精の時期を迎えると、河川を下り海に出て、受精・産卵の場所であるマリアナ海溝あたりまで長い長い旅をする。そして、条件が整った夜にオスとメスとによって産卵・受精がなされる。孵化した稚魚は太平洋の黒潮に乗って日本列島に近づき、河川を12月初めごろから溯る。このシラスウナギと呼ばれる稚魚を特別採捕漁業権の免許(知事許可漁業)を受けた漁業者が採捕するのである。大阪市と堺市の境界を流れる大和川、和歌山の紀ノ川など主として日本の太平洋側の河川で、冬場にヘッドライトを点けたシラスウナギ漁がみられる。採捕されたシラスウナギは専門に扱う業者が漁業者から買い取り、それらの流通業者の手により、全国のウナギ養殖業者に販売されるのである。昨冬もシラスウナギ漁は不漁であったが今冬はさらにひどい状況だという。三河一色で有名な愛知県では12月に8.6グラム、
徳島県で10グラム、高知県に至っては0グラムということで、全国では昨年の1%しか採れていない大不漁であるという。今年の春に養殖池に入れるシラスウナギは、来年の夏の土用の丑用である。したがって、来年の夏はウナ丼、ウナギの蒲焼きは食べられない、あるいは大枚をはたかなければならないということである。
野菜にしろウナギにしろ食べ物は自然の賜物、自然からの贈り物である。台風もあれば、長雨もある。日照りもあれば低温もある。農家の方が一生懸命自然現象による農産物の被害をくい止めようとしても限界がある。自然現象による減産は、仕方ないこととして、甘んじて受け入れる。代替できる農産物を食すれば良い。大きくは地球環境をどのように変えて行くのかの視点に立った努力をすることが大切になる。水産物の場合は、天然の水産生物資源に依存する割合が何といっても大きい。養殖業が進みつつあるが、食用魚類の1割程度を賄っているにすぎない。したがって、天然の魚をとりすぎないこと、乱獲をしないこと。常に持続的、サステイナブルな漁業を世界中が行うことが肝要となる。そのための国際会議、多国間交渉、漁業協定を国連の食種農業機構の水産分野が中心になって行うこと。そのリーダーシップは日本が果たすことが大切ではなかろうか。私達消費者はサステイナブルな漁法で漁獲された魚だけを食することも大事なことだ。
温かい鍋料理と魚料理を、これからも美味しくいただきたいものである。

018年2月
I.M.そろばん副理事長 榎 彰德
消費者支援機構関西理事長
近畿大学農業学部非常勤講師

ぴったりの本がありました。図書館などを利用して是非お読みください。
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■塚本 勝巳 『大洋に一粒の卵を求めて~ウナギ1億年の謎に挑む』 ~新潮文庫~
■河崎 貴一 『日本のすごい食材』  ~文春新書~
■山本 謙治 『炎の牛肉教室』 ~講談社現代新書~

●新年のご挨拶

京都府 荒木  光

 今日の企業の姿とは、大きくかけ離れている企業の理念。をお聞きしました。これこそが、本来の企業の姿であると感銘を受けました。又、近江商人には、仏教の教えが身に付いていたということでした。アメリカの初期資本主義のピュリタンの教えを色濃く受けていたことと同じようだと思いました。
今日の企業には、このような宗教の心が全く無いことが大変、残念です。
本日のお話し、本当に有り難うございました。


 

茨城県 平塚 恒夫

近江商人とは、なんと近江から外(他の地域)に出たものが、そこで商売をして定着していった人たちだったのでした、日本中のあちこちにそのルーツの人たちが商売をし、現在でも沢山の会社が近江商人のものが残っていると聞いて改めて驚きと、自分の無知ぶりを感じてしまいました。
三方よしとは世間よし、買い手よし、売り手よしを言います。近江商人はこの経営理念である。見習っていきたいものです。これを、そろばんに当てはめたらどうなるのでしょうか?じっくりとも行かないのですが、今年の課題として取り組んで行きたいと思っています。


 

千葉県 菅  幸子

いつも元気なトップの方々がいらっしゃらないという、ちょっと寂しく始まりました新春セミナーでしたが、渡辺先生の司会で和やかに進みました。ありがとうございます。
セッションでは、山田先生のお教室のお話がリアルに聞くことができてとても参考になりました。検定、競技、お楽しみ会、とメリハリがついていてたくさんの工夫をされている様子がすばらしいです。
特別講演「三方よし」では、岩根順子先生から貴重なお話を聞くことができました。利益はどう使うのか3つ、①貯金、②資本金への増資、③社員へボーナス、とのこと、勉強になりました。
光先生からのお話で、考える力をつけるための教育法や、目標がいつのまにか目的に変わらないよう、これからも勉強してまいりたいと思います。


 

茨城県 北原美智子

・年頭所感~荒木先生
環境問題の法則を力強く教授いただきました。生徒との会話の中で環境に意識的に結び付けていく必要を感じました。「そろばんが作られるまで」で伝えられたらと思いました。
・山田ふえる先生
塾の紹介から入り指導方針、行事では検定、段位をめざす為に各団体の良さと、会議所1級満点合格を応援する。競技会参加数が多い。その時選手の胸には塾名入りのワッペン(手作り)をつける。クリスマス会の内容も写真で紹介いただきありがとうございました。
・幼児指導~菅幸子先生
モンテッソーリ教育の教具の利用紹介と幼児との接応を、数字を実際に書く作業を通して感覚を感じました。
・「三方よし」~岩根順子先生
図を板書くださり、独り善がりをせずに社会(地域)へはき出すこと。理念を持ち、実際の企業名を出され、どう継承されて行く等、詳細にお話くださり、ありがとうございました。以前(7月のエミールさん)の講話の中で、アインシュタインが大学に案内をして、それにより奨学を受け、学ぶ学生が育つ、アメリカにも近江商人の精神があるのだと感じました。
最後になりましたが、企画くださった渡邉真一先生、ありがとうございました。


 

千葉県 喜多 高明

 荒木理事長からはエネルギー保存の法則、又、エントロピー増大の法則やモアイ文明の滅亡は、何故起こったのかという課題。
近江商人の理念と商法について三方よし、に多くを学んだ。


静岡県 渡邉 真一

一年の始まりの新春セミナー、無事終わる事が出来ました。これも、皆様のおかげだと思っています。特にセッションして下さった、山田先生、菅先生に、改めて、お礼申し上げます。お願いした時に、快くお引き受け下さり、担当として、とても心強く思いました。
それから、事務局の力は、無くてはならないものだと、考えさせられるセミナーでした。
セミナー実施に色々なことを考えていましたが、事務局の一言で、すべて解決。事務局には、感謝いたします。欲を言えば、参加者がもう少し、希望したかったのですが、ご事情が、どの会員の先生方にもあるので、仕方ありません。
特に、一月は、忙しいので、来年の新春セミナーは、二月に持って行ったらと、私個人、思いました。

●事務局だより

平成30年2月号です。この冬は45年振りとかの寒い冬なのだそうです。当、I.M. 榎 彰德 副理事長による巻頭言のごとく、大自然に負けない体をつくり、大自然からの贈り物を心して戴きながら地球を大切に扱いたいものです。

【2月セミナーの件】

荒木 副理事長の任務である「月に一度、早起きをしてセミナーに出席し、知恵袋を満杯にしておきましょう!」で知られるI.M.セミナーの件です。
荒木 副理事長は「2月からセミナーをやるぞ!」と張り切って退院なさいました。が、ご自身、周りの雰囲気から「2月は無理だな・・・と」観念なさり、「3月・・・だな」。と独り言です。今少し体力の回復を願いたいところです。宜しくお願いします。

【グローバルそろばんオリンピック開催について】

I.M.そろばんは、恒例のグローバルそろばんオリンピック開催にあたり、大勢の参加申込を戴きました。有り難うございました。
事務局からは今回「オリンピック問題過去物」を、会員と会員外の一部の先生へ同封させていただきました。多くの方に「そろばんオリンピック」の広報を目的に、皆様方に一度、弾いてお楽しみいただきますよう、お届けしました。そして来年こそ、生徒と是非ご参加下さい。
この度については2月15日(木)まで参加申込の対応をしますので、お声かけ下さい。
また、大会当日に於けるボランティアも募集中です(昼食付き)。ご連絡をお願いします。

【文章問題について】

昨年11月、“オリンピック文章題に絵を使わない”という相談を提案しました。
が、U.S.A側から「それは教育段階に於いて、指導上困る」というお返事にて、今回も「絵を見て答える」ことで実施となりました。「夏のハワイ大会で顔合わせの上、話し合いましょう」。会員の先生方、8月のハワイ大会はお一人でも多くご参加頂きますよう3月のレポートでもう一度案内申し上げます。

『過去問題の販売』

●総合競技問題一式(かけ算・わり算・加減算)  540円
●文章問題(英文)各カップ別一式        324円

※ご購入、問い合わせは事務局までお願いします。

喜多 吉子

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